ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

裏切りの騎士は愛を乞う

裏切りの騎士は愛を乞う

著者:
春日部こみと
イラスト:
岩崎陽子
発売日:
2017/06/03
価格:
640円(税抜)
 

俺以外の誰に抱かれると?

冷酷な父と横暴な異母姉に支配された王宮で、息を潜めるように暮らす王女サラ。“憐れ姫”と周囲に蔑まれるなか、護衛騎士のケヴィンだけはサラを励まし、愛情を注いでくれていた。サラはいつしかそんなケヴィンに恋をする。しかし、サラの誘拐事件をきっかけに二人の主従関係は歪んでしまい……。「後戻りはできませんよ?」哀しげな笑みを見せるケヴィンに執拗に抱かれ、彼に溺れていくサラ。だがそんななか、とある衝撃的な真実を知り――!?

気高い騎士ד役立たず”の姫、主従を越えた禁断愛!

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登場人物紹介

サラ

サラ

第二王女。母を毒殺されて以降、目立たないように生きてきた。ケヴィンと出会い、明るさを取り戻していくが……。

ケヴィン

ケヴィン

闘技会で優勝し、その褒賞としてサラの護衛につくことを望む。護衛騎士としてサラを溺愛するが……。

お試し読み

「好きよ」
 告げれば、ケヴィンが目を見開いて肩を強ばらせた。
 予想をしていた通りの反応に、それでも傷つく心を、サラは微笑みで隠す。
「ねぇ、あなたも言って、ケヴィン。恋人同士は、愛の言葉をかけ合うものなのでしょう?」
 そう言って、小首を傾げてみせれば、ケヴィンはクッと眉間を寄せる。
「……それもお芝居?」
 愛しい男の苦々しげな表情にも、サラは微笑んだ。
 精一杯婀娜っぽく見せたつもりの微笑みは、情事の最中の恋人のように見えるだろうか。
 真似事の情事。嘘の言葉。でもそこに潜めるのは本当の心だ。
 ──呆れていい。蔑んでいいの。
 蔑んで呆れ果て、欠片の躊躇もなく私を見棄ててしまえばいい。そして憐れで愚かな娘のことなど、きれいさっぱり忘れてしまえばいいのだ。
 ──私は、私だけは覚えているから。
 そうすれば、この離宮であなたを愛したことを、そしてあなたに愛されたという夢を抱いて、微睡みながら死んでいける。
「愛してるわ、ケヴィン」
 サラはまた嘘を吐くふりをして、本当の愛を告げる。
 ケヴィンが聞くに堪えないとばかりに苦悶の表情で目を閉じた。
「もう黙って」
 ケヴィンが短く命じた。
 そして閉じた瞼を開くと、サラに覆い被さるように上体を屈めた。
 重なる唇に、サラはうっとりと瞼を閉じる。
 これは夢だ。この夢の中では、サラとケヴィンは恋人同士だ。
 愛を囁き合い、触れ合い、抱き締め合える。
 慈しみ合い、幸せだと微笑み合える。
 絡み合い、擦り合わせられる舌の感触に、息苦しさとは異なる涙が滲んだ。
 幸せだと、サラは思った。
 愛しいと思う相手に触れ、触れられる歓びが、こんなにも甘いとは思わなかった。そして、それら全てが紛い物だという事実が、こんなにも苦いとは思わなかった。
 サラの涙に目敏く気づいたケヴィンが、親指でそっとそれを拭う。
「なぜ泣く」
 ケヴィンが頬を両手で包み、覗き込むようにして瞳を合わせてきた。
 海色の目の中に、自分の情けない顔が映っていた。
 泣きそうに微笑んでいる。
 幸せそうなのか悲しそうなのか、自分にもわからない、ぐちゃぐちゃの顔だ。
「サラ……」
 何かを言おうとするケヴィンを遮って、サラはまた願い事を言った。
「呼んで、ケヴィン。もっと、私の名を」
 ──ただのサラと呼んで。王女ではない、主ではない、ただのサラとして、もっと私に触れて。
「サラ」
 サラの望みに、ケヴィンはすんなりと応えてくれる。
 それが嬉しいのと同時に、彼がどうして自分の望みに従順なのかを、知りたくなかった。
 もしあがないのためだと言われたら、せっかくの夢が覚めてしまう。
 ケヴィンに抱かれる今だけは、彼に愛されているという夢を見ていたい。
 サラは目の前の太い首に腕を回し、自らも口づけをする。だが誘い方などわからないため、ただ唇を付けて離れるという拙い口づけだ。それでもケヴィンには効果があったようで、離れたサラの唇を追うように食まれ、深く貪られる。
 口づけの間、頬に添えられていたケヴィンの手がサラの肌を滑り降りていく。武人であるケヴィンの手は硬く少しかさついていて、熱かった。顔の輪郭を、耳の形を、首の細さを、鎖骨の場所を、くすぐるように、あるいは確かめるようにして撫でられる度、ぞくぞくとする慄きがサラの身に走った。
 小さく身悶えを繰り返すサラに、ケヴィンが喉の奥でくぐもった笑い声を出した。
「感じやすい身体だな」
 揶揄なのか、嘲りなのか。台詞の意味を考えようとするが、耳朶を食まれてそれどころではなくなった。一際大きな震えに背筋がしなった。
「ぁあっ──!」
「ああ、いい声で啼く……」
 ケヴィンが溜め息のように耳の中に囁きかける。その刺激に、サラがまたもビクビクと身を捩らせた。
「ああっ」
「ああ、いいな。もっと啼くといい、サラ。もっと聞きたい」
「んぁ……だ、だめ、そこで──」
 話さないで、と言いたかったが、ケヴィンの舌に耳孔を侵されて、また嬌声を上げることになった。
 びちゃり、という粘着質な水音が鼓膜を大きく響かせる。そのまま耳を執拗に舐め回され、サラは陸に打ち上げられた魚のように身を跳ねさせた。
「は、ぁあんっ、あ、あ、────」
 敏感な耳を舌で弄られる間も、ケヴィンの手はサラの身体の探求を休まなかった。
 やがてその手は小さな双丘に辿り着く。痩身のサラのそれはささやかなもので、おまけに仰向いて寝そべっているので、見た目で膨らみは感じ取れない程度だ。
 恥ずかしくなって隠そうと動かした腕は、あっさりとケヴィンに摑まれ阻止される。
「隠すな」
 優しい……けれど否を言わせない声音で、ケヴィンが言った。
 ケヴィンを拒めるはずのないサラが恐る恐る力を抜けば、クリームのように真っ白な肌の上にのる、赤い二つの実が露わになった。

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