ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

残酷王の不器用な溺愛

残酷王の不器用な溺愛

著者:
八巻にのは
イラスト:
氷堂れん
発売日:
2018年03月03日
定価:
704円(10%税込)
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お前が可愛すぎて心配だ。

血も涙もない残酷王と恐れられるグラントに嫁ぐことになったヒスイ。周囲から哀れみの目を向けられるが、彼はヒスイの初恋の相手。この結婚を心から喜んでいた。けれど、ドキドキしつつ迎えた初夜、彼から「さっさとすませよう」と言われてしまう。がっかりするヒスイだが、忙しい彼の手を煩わせないようにしなくてはと、彼が持っていた媚薬を一気飲み! それを見てなぜかひどく動揺するグラント。強面な外見とは裏腹に、彼の愛撫はひどく優しくて……。
強面な残酷王×一途な王女、両片思いの結婚生活!?

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登場人物紹介

ヒスイ

ヒスイ

幼い頃からグラントを慕っている。昔グラントにクマのぬいぐるみをプレゼントしてもらったが、誰も信じてくれない。

グラント

グラント

いつも眉間に皺が寄っている、コワモテ国王。ヒスイにだけは甘々だが、やることがほとんど裏目に出てしまう。

お試し読み

「……言葉を失うほど、私が嫌いか」
 ふと、グラントがぽつりとこぼした。
「ち、違います」
「隠さずともよい。お前の心がどうであれ、私にはどうでもいいことだ」
 突き放すような言い方に、ヒスイは思わず落ち込んだ。
(やっぱり私には、興味ないってことよね……)
 彼が好きなのは母だとわかっていたのに、ほんの少しくらい自分を好きになってくれるかもしれないと、無意識のうちに期待していたのかもしれない。
「妻の務めは果たしてもらうが、多くは望まない。今晩は抱くが、毎夜お前に付き合う暇はない」
 淡泊な言葉には、愛情など欠片も感じられず、むしろヒスイを抱くことを面倒だと思っているようにも聞こえる。
 けれどそれに落胆する暇はなかった。グラントがヒスイの腕をぐっとつかんだからだ。
「さっさとすませよう。お前も、私との時間など早く切り上げたいだろうからな」
 言うなり、グラントはヒスイの腕を引き、夫婦の寝室へ移動する。
 部屋の奥にある扉は二人の寝室に繋がっているが、入るのは初めてだった。
 緊張のあまり、きちんと確認できたのは豪華なベッドが置かれていることくらいだったけれど、前にヒスイたちが暮らしていた後宮の部屋よりもこちらの方が広そうだ。
「ずっと黙っているが、やはり怖いか?」
 ベッドの前に連れてこられたところで、グラントが静かに尋ねた。
 じっと見つめられ、緊張するが、ヒスイは小さく首を横に振る。
「緊張を、してしまって……」
「安心しろ。痛まないよう薬も用意させた。お前はただ寝ていればいい」
 グラントはヒスイを抱き上げ、ベッドの上に軽々とのせてしまう。
「ただし、逃げ出そうと思うな」
 鋭い眼差しと共に念を押され、ヒスイはそんなつもりはないと言おうとした。
(でも、今の私が言っても説得力なんてないかしら……)
 緊張のあまり声が掠れ、表情も強ばっている自覚があるし、埋まらない彼との距離感に対する不安で、心が落ち着かない。
 言葉一つ満足に返せず、ヒスイは己の情けなさにうなだれる。
「そんな顔をするな」
 そのとき、ヒスイの頭にぽんと大きな温もりがのせられる。
 はっとして僅かに視線を上げると、グラントが苛立った顔でヒスイの頭を撫でていた。
 その表情は険しく、先ほどよりも恐ろしく見えたけれど、彼の手つきはぎこちないながらも優しい。
 それを感じていると、子供の頃に優しくされたことが思い出され、やっぱり自分は彼が好きなのだとヒスイはしみじみ思う。
 彼は昔もヒスイが落ち込んでいると、こうして頭を撫でてくれた。剣ダコのある彼の手は硬く節くれだっていて、触られるたびに髪が乱れてしまったけれど、その手に触れられるとひどく安心できたのだ。
 その手が母の死と共に遠ざかってしまったとき、ヒスイは深く悲しんだ。
 長い間泣いて、もう一度彼に触れてもらえるなら何でもすると星に願ったこともある。
(そうよ……。彼の側にいられるなら何でもするって、そう決めたはず)
 彼が自分を好きではないことも、理解していたはずだ。甘い期待を抱いてはいたが、それが打ち砕かれたとしても逃げないと決めたのだ。
 ならば今更、落ち込んでなどいられない。
「ごめんなさい、大丈夫です。続けてください」
 グラントの顔をしっかりと見て、ヒスイは力強く告げる。
 それから彼女はベッドの上で姿勢を正し、母から教わった作法を真似て、グラントに頭を下げた。
「ふつつか者ですが、妻として精一杯頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします」
 指先をつき、ヒスイは淑やかに告げる。
「頭を上げろ、今更かしこまる必要もないだろう」
「いえ、私はもう陛下の妻ですから。……それにもう一度、改めてご挨拶をしたいと思っていたので」
 本当は馬車の中で言葉を交わしておくべきだったのだが、あのときは浮かれすぎていて妻としての挨拶をすっかり忘れていた。
 顔を上げると、ヒスイはグラントに優しく微笑む。
「閨事は初めてなので至らぬ点もあるかと思います。おかしなところがあれば何でもおっしゃってくださいね。……あとそうだ、先ほどおっしゃっていたお薬というのはどちらにありますか? ぐいっと飲めばよろしいのですか?」
 夜着も脱いだ方がよいでしょうかと質問を重ねながら、ヒスイは胸元に手を置いた。
「……待て」
「あ、申し訳ございません。服は男性に脱がせていただくのでした……」
「いや、そういう意味ではなくてだな」
 苦虫を?みつぶしたような顔で言うと、グラントはそこでヒスイから僅かに距離を置き、押し黙る。
 やはり自分は何か粗相をしてしまったのかとそわそわしていると、グラントは長い沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。

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