ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

ネクロフィリアの渇愛

ネクロフィリアの渇愛

著者:
葛城阿高
イラスト:
花綵いおり
発売日:
2020年11月04日
定価:
748円(10%税込)
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たとえ死んでいても
私は貴女に狂喜する

ある事件に巻き込まれて死亡した魔女のイヴ。しかし屍は朽ちることなく、協力者さえいれば生き返ることができる。その機会を待ち続けていたイヴは数十年の歳月を経て、なぜか侯爵家嫡男ユリウスの部屋へ棺ごと運び込まれてしまう。夜毎に棺の蓋を開けては、屍状態のイヴにうっとりと愛を囁くユリウス。彼にとってイヴは母親以外で初めて心を動かされた女性であるらしい。「ネクロフィリアのうえマザコン!?」とイヴは警戒していたのだが……。
ネクロフィリアの貴公子×死せる魔女、ひと目惚れ執着ダークロマンス。

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登場人物紹介

イヴ

イヴ

ある異能を持つ魔女。臆病だが優しい性格。ひっそりと一人で生きてきたが、誰かを愛し愛されたいと願っている。

ユリウス

ユリウス

美貌と才能を併せ持つ侯爵家嫡子。生身の女性に対して一切興味を持てずにいたが、イヴとの出会いで一変する。

お試し読み

「イヴ?」
 肩で息をするイヴを、ユリウスが怪訝そうに見つめる。
 打ち明けなくても問題ないなら流れに身を任せようと思っていたイヴだったが、ユリウスの様子を見るかぎり、白状するしか道がない。
「ごめんなさい、わたし……慣れていないの。……初めてで。キスも何もかも、したことがないから」
 ――期待外れだ、子どもっぽい、とユリウスは幻滅してしまうかしら。
 ユリウスの反応が不安なイヴは、恐る恐る彼の様子を窺った。ユリウスは意表を衝かれたように驚いた様子で固まっていた。
「あ、あの……ユリウス? わたし――」
 どう弁解しようとも、告げた事実に変わりはない。それでも何か言わなければ、と口を動かそうとしたところに、ユリウスが言葉を挟んだ。
「いい。かまわない。むしろそのほうがいい。息は……止めなくていいから」
 うわ言のように口走ると、何かに取り憑かれたように、イヴを寝台に押し倒した。
「……っあ」
 初めてだと言ったのに、ユリウスの口づけはたちまち激しさを増した。唇を甘噛みし、舌と舌を絡ませて、イヴのすべてを余すところなく欲しているようだ。
 重なり合った体は布越しなのに熱く火照り、あっという間に頭の芯が溶けていく。
 ユリウスの手がイヴの体を撫でる。顔の輪郭、耳、首筋を通り、胸元のリボンを解いた。紐を弛ませずり下げて、白い肌を剥き出しにする。
「ユっ、ユリウ――」
 早急な展開にイヴは戸惑った。だが、言葉はユリウスに呑まれてしまう。
「愛してる。イヴ、愛してる。ずっとこうしたかった」
 温もりや、肌の湿度、ユリウスが纏っている体臭。これまで夢の中では感じられなかったものが、一気にイヴに襲いかかる。飽くほど聞いたはずの愛の言葉も、全身が受ける刺激によって心の奥のより深いところへ染み入ってくるような気がした。
 衣類が脱がされていくのに従って、ユリウスの口づけも下へ下へと降りていく。彼は両手で乳房を包み込むように揉みしだきながら、乳輪を舌でゆるりとなぞった。
「ん、ぁあっ!」
 期せずして声が上がってしまったことを、イヴは恥ずかしく思った。とっさに口元に手を当てるが、すでに声は出たあとだし、次から次に耐えがたい衝動が体を駆け巡るので、すぐに声になどかまっていられなくなった。
 そのうち、太腿のあたりに異物を感じるようになる。ユリウスのポケットになぜ鈍器が? と疑いかけて、すぐにその正体を悟った。
 ――硬く、熱く、大きなもの。これは、ユリウスの……。
 手で確かめたわけではないので詳細はわからないが、書物にあったよりもやけに大きい。さらにはそれがまもなく己を穿つということを、イヴは頭でわかっていても信じられないままだった。
「はぅ、……んんっ、く」
 イヴの乳房の先端も次第に硬くなり始め、ユリウスがちゅ、と口づけをして待ち構えていたように口内に取り込む。舌で転がし歯をかすめたりして戯れる。
 そして、イヴがそこに意識を囚われている間に、ユリウスによって衣類をすべて取り払われてしまった。
 隠すべきか、このまま堂々としているべきか。答えを出せないでいる隙に、ユリウスがイヴの膝に手をかけた。膝を曲げさせ開脚させて、あらわになったイヴの秘所にユリウスが顔を近づけていく。
「やっ……み、見ないで」
「どうして?」
「……恥ずかしい」
 己ですらろくに見たこともないような場所である。たまらずイヴは隠そうとしたが、ユリウスは楽しそうにイヴの両手を取ってしまう。
「そんなこと思う必要はない。イヴはどこもかしこも綺麗だよ。ここだって――」
 そう言うと、一番見られたくない場所にユリウスはいっそう顔を寄せ、舌でペロッと縦筋をなぞった。
「ひぁっ!」
 止める間もなく体がびくつく。まるで電流が走ったかのような、大きな熱量を感じた。
 イヴは悲鳴に近い声を上げたのに、ユリウスはやめるどころか気遣うことすらしない。
「ユっ、ユリウ……やあっ! なに? なにをして……んああっ」
 処女のイヴにも性知識はあるものの、女性器を舐めるなど知りもしなかった。
 ユリウスの舌が敏感なところをくすぐるたび、えも言われぬ未知の衝動に腰が勝手にゆらゆらと揺れる。時折当たる生暖かい吐息、吸い付くときの高い音。じんわりとして、何かが奥から溢れてくるようだ。
 声が抑えきれなかった。今まで出したことのない甘い声が鼻から抜けていく。ユリウスの口淫にイヴは完全に翻弄されていた。
 そのうち、体の奥に強く甘い刺激を受ける。
「ひっ、ユリ……っだめ」
 腰に力が入ってしまう。ぴちゃぴちゃと響く水音に、急所を執拗に攻められている感覚。これが快楽なのだ、とイヴが理解したときにはすでに遅く、後戻りできないところまで押し上げられていた。
 ぬるぬるで、ぐずぐずで、とても堪えきれない。やめてほしいはずなのに、もっとほしいと体が渇望してしまう。
 イヴはユリウスに手を伸ばし、その黒髪に触れた。自分がどうにかなってしまいそうで、ユリウスに助けを求めようとした。ところが、ユリウスはイヴの手を取り指を絡ませ合っただけで、あとはひたすら水音を立てるのみ。
 そのうちイヴは、ユリウスが何もしようとしないのは、自分をどこかへ導こうとしているからだと悟る。体の中で燻っていたものがどんどん膨れて大きくなり、出口と解放を求め始めたのだ。
 苦しかった呼吸はなおも変わらず苦しいまま。ただし、体調が悪いのではない。興奮しているせいだとわかる。
「ユリウス、いや……がまん、できない……っ」
 イヴはなりふりかまっていられなくなっていた。両脚をはしたなく広げ、背を弓なりに反らして、口からは嬌声が無意識に湧いて次から次へと溢れていく。
「いい。我慢なんてしなくていい。……イヴの好いように」
「だめよユリウス、……ぁ……、わた、わたしは……っあ! だめぇっ」
 ユリウスが軽くクリトリスに歯を立てた。それが最後の後押しとなった。

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