ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

竜を宿す騎士は執愛のままに巫女を奪う

竜を宿す騎士は執愛のままに巫女を奪う

著者:
深森ゆうか
イラスト:
天路ゆうつづ
発売日:
2023年06月05日
定価:
847円(10%税込)
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ずっと追っていた。その愛を得るために――

『胸の痣と先見の力を持つ娘は十八で死ぬ』遠い昔そんな呪いを竜より受けた領主家の娘アメリア。彼女はいつ呪いが発動するか知れない中、前向きに解呪法を探る日々を送っていた。心の支えは護衛騎士のテオ。彼もまたアメリアを深く愛していたが、時折聞こえる邪悪な声に悩んでいた。彼女に愛を与え、絶望させて殺せ――。それが己の前世である竜の声だと気づいた時、彼は彼女に愛を囁き積年の想いを遂げる。内なる闇に染まり始めた彼の真意は――。

前世の闇に囚われた騎士×呪いに抗う太陽の乙女、愛と共に死と絶望を求める〝竜の呪い〟の正体は…。

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登場人物紹介

アメリア

アメリア

領主の娘。“竜の呪い”と謂われる赤い痣を持ちながら、煌めく美しさで陽向姫と呼ばれている。

テオ

テオ

護衛騎士。幼い頃に領主家に引き取られた元孤児で、恋い慕うアメリアを守るために強くなった。

お試し読み

はっきり、力強くそう言い切るテオの存在は、なんて心強いのだろう。アメリアは胸を熱くする。
同時に目が潤んでしまい、目頭に手を当てた。
「埃が目に入りましたか?」
テオがアメリアの目を探るように近づく。
「違うの。なんだか最近、涙もろくなったみたい。テオの頼りになる言葉が嬉しくて」
「もっと頼っていいんです。そりゃあアメリア様やアメリア様の叔父上のように翻訳なんてできませんけれど。でも、俺はアメリア様と共にいるつもりです」
真っ直ぐに見つめてくるテオの瞳が眩しく感じる。いや、テオの存在そのものが眩しいのだ。自分にとって、彼は何にも代え難い宝物。
だからこそ、自分は生きたい。彼の傍にいたい。彼の出自が何だって、彼が自分をどう想っているのかだってどうでもいい。
我が儘な感情に流されてアメリアは気持ちを吐露してしまう。
「私の見解が間違っていて、無駄になって死んでしまっても? 傍にいてくれる?」
けれど、どんな我が儘な言葉を吐いても「愛してる」だけは言えない。
あまりに重たい意味だ。〝愛〟で彼を縛り付けるなど、とてもできない。
「傍にいてくれるだけでいいの。女として見てくれなくていい。どうか、私の生きる姿をテオの目に焼き付けて」
駄目だ、涙が溢れてしまう。こんな風にせがむつもりはなかった。けれど、死ぬ瞬間までテオに傍にいてほしいという感情が、泉のように溢れ出て止まらない。
また胸の痣が熱くなる。アメリアは持っていた紐閉じの本を胸に当てる。
テオはそれをゆっくりと彼女の手から引き離し、原本の上に重ねた。
「アメリア様、俺は最初からそのつもりです。初めて会ったときから俺は、貴女が儚くなるその日まで傍にいると決意したんです」
「テオ……」
なんという愛の告白なのか。アメリアは止まらない涙を懸命に指で拭う。
「ふふ……。テオの告白、求婚の言葉みたいよ?」
アメリア様、とテオは名を呼びながら涙を拭ってくれる。少しかさついた彼の指。でも、なんて心地好いのか。
彼の目が微笑みで細められる。それでも黄褐色の瞳の輝きは失せない。
「この前は驚かせてすみません。……でも、想いを止められませんでした」
テオの部屋での口づけの件だ。アメリアは頬を擦る彼の手にそっと触れる。
「いいのよ。私だって受け入れたんですもの」
「俺は、どこの誰だかわからない、ただの〝テオ〟です。それがとても嫌で仕方ない。呪いが発現したとき、奥様は泣きながらアメリア様の花嫁衣装の生地を編んだとか、見合う相手を見つけるとか話された……俺は蚊帳の外だと改めて気づかされた。自分が貴族であったら、平民でも豪商の生まれであったなら、いや、孤児でなくせめて苗字がわかっていたなら、堂々とあの場で結婚を申し込めたかもしれないと」
「テオ、そこまで私のことを……?」
アメリアの言葉にテオは大きく息を吐き出し、口をきつく結ぶと頷いた。
「アメリア様への想いは誰にも……そう、誰にも負けません。……前世にも自分の過去にも負けません」
「テオはテオだわ。ずっと傍にいてくれたテオに、私はどれだけ元気づけられたか……貴方がどんな貴方であろうが構わないわ」
「これからも傍におります」
「ええ」
「俺の命をアメリア様に捧げます。だから、貴女の命を俺にください」
激しい愛の告白にアメリアの身体が一瞬、ふるりと震えた。真っ直ぐに躊躇いもなく自分を見つめてくる彼の表情には、揺るぎない決意が感じられる。
──ああ、私はテオに愛されている。
それだけでアメリアは十分だった。
(これから何があっても、彼を愛そう。たとえ彼の手にかかっても)
それがテオへの愛の証だ。
アメリアは手を伸ばしてテオの頬を包み、背を伸ばして彼にそっとキスをした。ほころび始めた花を愛おしむかのように。
テオも同じようにキスを返す。
互いの唇がまるで嫋やかな花を愛でるように触れ合い、ゆっくりと激しさを増していく。
舌が口腔内に滑り込んでくると、アメリアもそれに倣うように応じる。
くちゅくちゅと音を立てながら唾液が混じり合い、口の端から溢れ顎に流れていく。それでも舌を絡ませ、吸い、歯列を探り合う。
「ん……んん、ん、ぅうん」
甘い、蜂蜜酒よりも甘い酒を飲んで酔ったようなフワフワした気分になる。それが全身に広がり、痺れるような感覚にアメリアの背中は粟立った。
いつの間にかテオはアメリアを抱き締め、キスを仕掛けながらも彼女の背中を撫でてそのまま腰の線をなぞる。
ゾクゾクするのに気持ち悪いとは思わない。むしろ、もっと触れてほしいと訴えるようにアメリアはテオの背中に腕を回す。
テオの手がアメリアの腰から臀部にわたって弧を描くように撫で始め、アメリアは思わず身を竦ませた。
離れた口から銀糸が生まれ、切れた。すぐにテオがアメリアに問う。
「怖い?」
耳元で囁かれ、吐息混じりの声に身体をひくつかせながらアメリアは首を振る。
「こっちへ」
テオは短く告げると、書斎に置かれている長椅子へアメリアを導く。そして、彼女を仰向けに横たわらせた。
自分の上に覆い被さるようにテオが近づいてくる。これから何をするのか、経験のないアメリアとてわからないわけではない。でも情事の内容など詳しくは知らない。それだけに期待と未知への恐ろしさが織り交ざり、知らず身体が震えてくる。
「……今なら引き返すことができますよ?」
そう言いながらテオはアメリアの髪を一筋手に取り、口づけする。それがあまりにも蠱惑的で、もっと先に進みたくなった。
(飢えてる女みたいだわ、私)
恥ずかしい。けれどそれが素直な気持ちで、この欲求はテオにしか起きないものだとアメリアはわかっている。
テオだから、彼だから──『愛しい貴方だから』。
心の中で誰かの声が交ざった気がした。きっと気のせい。それほど自分は緊張している。
「テオと一つになりたい……」
アメリアは告げた。掠れて、思いのほか小さな声になってしまったが、ちゃんと彼に伝わったようだった。
テオはアメリアの乳房を服の上から包み込み、やんわりと揉み始めた。まろやかな乳房がテオの手によって形を変えるのが服の上からでも感じられた。
「柔らかい……ふんわりとしていて、とても」
テオがうっとりと呟くとアメリアの双丘を交互に揉み出す。
「……ぁ、あっ」
緊張して身体が硬くなっているのに、どうしてか下腹部に熱が生まれ、じわりと身体に広がっていく。
両手のひらで乳房を中央に寄せられては弧を描きながら揉みしだかれていくうちに、乳首がツンと勃ち上がってきた。次第に熱くなり芯を持って硬くなっている気がする。
そこからジンジンとした痺れが生まれ、熱くなる下腹部に更に熱を与えている。
「あ……っ、テ、テオ……駄目、そんなことしないで……なんか変な感じが……」
「その感覚に従って……」

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