ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

水底の花嫁
  • yondemill

水底の花嫁

著者:
山野辺りり
イラスト:
DUO BRAND.
発売日:
2014年12月26日
定価:
660円(10%税込)
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今度こそ、結ばれよう。

事故で記憶を失ったニアは、優しい老夫婦に助けられ、貧しくも穏やかに暮らしていた。だがある日、突然訪れた子爵アレクセイに「君は私の妻セシリアだ」と告げられ、彼の屋敷へと連れて行かれてしまう。戸惑いつつも夫婦として暮らすなか、離れていた時間を埋めるように愛を注ぐアレクセイに、心も身体も満たされていく。しかし、その想いに応えたいセシリアが記憶を取り戻そうとすると、彼は「今のままでいい」と苦しげな表情を浮かべて――?

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登場人物紹介

セシリア

セシリア

記憶を失い、ニアという名で生活していた。ある日突然、自分の夫だと言うアレクセイが現れ……?

アレクセイ

アレクセイ

セシリアの夫で事業をいくつも抱える子爵。セシリアの記憶に関して、何か隠しているようで……?

お試し読み

「……ッあっ、……や、ぁあっ、そんな……そこばっかり……!」
 執拗に弄られるのはセシリアが冷静ではいられなくなる所ばかりで、立て続けに与えられる淫楽に涙が滲む。腰を押さえ込まれ、感覚を逃がすこともできない。
「セシリアをもっと快くしてあげたいんだ。離れていた分、その前の分も含めて、君に奉仕したい」
「や、ぁっ、……な、何を……?」
 離れていた間の埋め合わせをしたいというのは理解できる。けれど、その前とは……? アレクセイとセシリアは、円満な夫婦ではなかったのだろうか? 政略結婚により結ばれ、自分は心を開く暇もなく分かたれてしまったということか。抱いた疑問は纏まる前に押し流された。
 折り畳まれたセシリアの脚の間にアレクセイが顔を埋める。あまりに淫猥な体勢に涙が滲んだが、少しでも閉じようと足掻く太腿を押さえられ、熱い視線を注がれる。
「そんなところ……っ、」
「この黒子を実際に見たことがある男は私だけだ。これからも、この先も、ずっと」
 湿った唇が柔らかな肌を食む。チクリと吸い上げられる刺激で、セシリアはその場所を初めて知った。脚の付け根の際どい位置に甘い痛みが刻まれる。そのままアレクセイの舌は蜜源へと到達した。
 既に濡れそぼったそこを舌で転がされ、セシリアの腰は跳ね上がる。指で嬲られた時よりも、強烈な快楽。それがねっとりと押し当てられた舌により暴力的な強さでセシリアを責め苛む。
「んぁっ、あ、駄目……! それは、変になる……っ!!」
「ここがセシリアが一番好きな所。よかった、変わらないね。……いいよ、いっぱいイって」
 黒い瞳が、じっと注がれている。セシリアの全てを見逃すまいと、熱心な視線が絡みついていた。しっかり太腿を掴まれているせいで、ずり上がることさえ叶わず、無防備に弱い部分を曝け出すより他に道はない。
「愛しているよ、セシリア」
「ふ、ぁっ、ああっ」
 宣言通り、アレクセイは丁寧かつ執拗に愛撫を施した。指と舌、時には息を吹きかけてセシリアの理性を剥ぎ取ってゆく。合間に惜しげもなく囁かれる言葉は、全て愛を告げるもの。決して言い慣れていないと思われるのに、彼は照れることなく繰り返す。それはまるで、今言わなければという使命に駆られているようにも見えた。
 恥ずかしくて顔を逸らすセシリアの顎を捉え、アレクセイは眼を合わせることを強要する。力ずくの強引さはなくとも、拒絶を許さない瞳が薄闇の中で光っていた。
「……ぁ」
「逃げないでくれ。頼むから、そんな素振りも見せないで」
 頼りなく揺れる彼の虹彩は闇の色を従えている。夜を支配する王者の色。それなのに、酷く孤独に思える。もしも今セシリアが突き放したならば、たった独り迷子になってしまうかもしれない。
「逃げたりしません」
 そのつもりならば、最初から命懸けで拒んでいる。どんな思惑が働いたにしろ、選んだのはセシリア自身だ。そして、今この状況を選択したのも自分自身。
 手を伸ばしアレクセイの黒い髪を指で梳けば、体温よりも低い温度がサラサラとこぼれた。真っ直ぐでしなやかなそれは、アレクセイの気質をよく表している気がする。浮ついたところのない実直さ。そして厳格さの裏に秘めた情熱。絡まることなく流れ落ちる艶に眼を奪われ、セシリアは幾度も彼の髪を撫でた。
「……擽ったいな」
 やんわりと取られた手の平に口付けられ、そのまま指を一本ずつ舐められる。彼の口から覗く赤い舌は、犯罪的に悩ましかった。
「私も、擽ったいです」
「……ああ、もう駄目だ。我慢できない。本当はもっとセシリアを悦ばせてあげたいのに……君の中に入りたくて堪らない……っ」
 許しを請うように余裕のない眼を向けられ、下腹部に溜まる熱は飽和状態になった。もうセシリアの欲張りな虚ろは、アレクセイにしか埋められない。それを互いに察している。
「お願い……っ、アレク様……!」
 欲しいなどと淫らなことは言えない。それでも表情や眼、身体の変化で充分伝わったはずだ。押し付けてしまいそうになる腰を必死に宥め、セシリアは視線で強請った。一刻も早く繋がりたいのは、こちらも同じ。ひょっとしたら、渇望はセシリアの方が強いかもしれない。
「卑怯な男ですまない……」
「え? ……ぁ、あっ」
 隘路を割くように屹立が押し入ってくる。強引な侵入は苦しいはずなのに、それ以上の幸福感に満たされた。痛みは直ぐに別のものへと上書きされ、呼吸もままならない圧迫感もアレクセイが与えてくれるものだと思えば、愛しくて堪らなかった。

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