
この発情は何かの間違いです!! 私はあなたの運命の番ではありません!
- 著者:
- 百門一新
- イラスト:
- 南国パイン
- 発売日:
- 2025年10月06日
- 定価:
- 869円(10%税込)
君の子宮が私の精子を欲しがっているんだね
精霊の血筋の公爵令嬢フィアナは幼馴染の王子アレクシスに淡く幼い恋心を抱いていた。しかしある時「未来視」の能力を発現し、アレクシスに「運命の番」が見つかり、失恋する未来を知ってしまう。そのうえ「運命の番」に嫉妬し破滅してしまうのだ。そうならないよう彼と距離を置くが、年頃になったフィアナはなぜかアレクシスに「発情」してしまい……。運命の番相手にしか起こらないはずなのにと困惑する彼女を「大丈夫、私が楽にしてあげるからね」とアレクシスは抱き寄せ、やさしく身体に触れてきて……。
運命を捻じ曲げる王太子×破滅を回避したい令嬢、執着愛は未来を変える!?


フィアナ
平凡と自認する公爵令嬢。初恋相手のアレクシスとは家族ぐるみの仲だが、未来視で破滅する未来を知り、恋心を封印。

アレクシス
美しく優しい完璧な王子様。昔からフィアナを可愛がり、成年後の彼女の体の異変も受け止め解消しようとするが……?
痙攣した次の瞬間、下肢から力が抜けて床にへたりこむ。
「フィアナ? やはり大丈夫ではないみたいだね」
心配したのか、そっと腕を放したアレクシスが覗き込んでくる。
(──このっ、バカ力っ)
フィアナは、床に両手をついて肩越しにギッと彼を睨み上げた。
アレクシスが腰をかがめて困ったように微笑み返してくる。
月明かりしかない室内でも絹みたいに輝いて見える金髪が、少し首を傾げた彼の端整な顔にかかっていた。近くで見ると宝石みたいで、つい目を奪われるブルーの瞳で見つめてくる。
「とても苦しそうだ」
アレクシスは片膝をついて目線の高さを合わせてきた。
王子様がそうやすやすと膝をつくものではない。フィアナが初めて会った瞬間に憧れを抱いてしまったくらいに、今も優しい完璧な王子様だ。
(ほんと、いい人なのよね……でも今は放っておいてほしいわ)
やや強引なところも許せてしまう。
勘違いしそうになるくらい、幼い頃からずっと大切にレディ扱いされてきた。
それから逃げるように家庭教師の待つ部屋へ向かうフィアナに、周りは『ときめきよりも勉強か』なんてからかうように声をかけてきたが、アレクシスからもらった優しさ一つ一つがフィアナの胸に積もっている。
顔を見ると、つい距離をとることも忘れて見つめ合ってしまうくらい。
本当はそれほど好きになってしまっていたのだ。
「ぼうっとしているようだけど、大丈夫かい?」
アレクシスが手を伸ばす。
「あ……っ」
頰に触れられ、我に返った。そこから熱がじわりと沁み込んでくるみたいに身体の反応が増して、フィアナは思わず口を強く閉じる。
「少し熱もあるようだ」
「お、お酒のせいです、問題ありません」
遅れて返事をし、どうにか愛想笑いを返す。
「私は平気ですから、お戻りになって」
それとなく彼の手を避けようとしたら、逆にアレクシスは近寄ってフィアナの左頰を大きな手のひらで覆う。
彼の指先がこめかみの髪の中へ滑り込んだ。
優しすぎる彼の指づかいのせいか、背筋にぞくぞくっと甘い痺れが起こった。
(うっ、だめ、こらえて)
フィアナは唇に力を入れる。
アレクシスはそのブルーの瞳にフィアナを映し出し、じーっと見つめてくる。
と、不意に彼の手がフィアナの首の後ろを撫でた。
「ひんっ」
フィアナは全身をびくんっと甘くはね上げた。
アレクシスが目を見開く。フィアナも、恥ずかしさのあまり一瞬にして赤面した。
(で、殿下の前でなんて声を出してるのっ)
ものすごく恥ずかしい。肌という肌がじわりと赤味を帯びるのをフィアナは感じた。
「あ、あの、違うんです。今のは、少し驚いてしまって」
必死に言い訳していたら、今度は首筋をするりと撫でられた。
「ひぅっ」
ぞくんっと喉がそった。
続いて、ひくつく喉をさらに撫で上げられて声を止められなかった。
「はっ、ぁ、あ……?」
アレクシスのわけのわからない行動に快感が煽られる。戸惑っていると、彼の手が顔を包み込んできた。フィアナより少し低い体温が心地いい。
ぶるっと身体が甘く震え、目が潤む。
「で、でん、か」
手を離してもらいたいのに、うまく言葉にならない。
アレクシスの口角を美しく引き上げた表情のおかげで少しは落ち着けているけれど。
(……あれ? 殿下、笑っているの?)
一瞬違和感を覚えたけれど、頭がぽうっとしてそれ以上考えられない。
彼の親指がフィアナの唇の端から口を押し開く。
「んぅっ」
押し込まれた親指で内側の粘膜に触れられて身体がびくんっとはねた。続いてフィアナの舌にくちゅりと触れる。
どうしてこんなことをされているのかも理解できないのに、指でくすぐられたら、勝手に舌が動いてしまう。
「フィアナの中、とても熱いね。普段の二倍くらいは熱い」
触ったこともないのに、どうしてそんなことが言えるのだろう。
「んんっ、ふっ」
もう一つの手の指が口内に押し込まれて舌を揉み込まれた。
(苦しいのに、どうして……)
なぜかはわからないが、彼がくちゅくちゅと舌を撫でるとぞくぞく心地よさが起こり、フィアナは自分から舐めにいってしまう。
「フィアナ──これは、発情だね?」
「っ」
アレクシスが満足げに指をそっと抜く。
言いあてられてフィアナは、一瞬にして現実に引き戻され肝がさーっと冷えた。
「ち、違うの、これは……」
「違わないよ。君の身体は、私に反応している」
「反応だなんて」
恥じらいに頰がかっと赤らみ、フィアナは言い訳を考えながら座り込んだ床の上で後退する。だがアレクシスが、軽々と彼女を捕まえた。
腕を握られただけなのに全身がびくびくっとはねる。
「ほら、接触しただけで、こうだ」
くすりと吐息で笑われて、フィアナは恥じた。
視線ごと顔を横に背けたら、アレクシスがそのまま彼女を両腕で抱き上げた。
「殿下っ?」
アレクシスが部屋の奥へと歩き出してしまい、フィアナは慌てた。
「嬉しいな。君は私の番だったんだね」
──違う。
フィアナは胸がぎゅっと締めつけられた。
「あ、あの、ちが」
「苦しいだろう。大丈夫、私が楽にしてあげるからね」
楽にとは、と頭の中で疑問が上がってフィアナの思考が停止する。
優しくて、不埒とは無縁としか思えない王子様から、とんでもない言葉が聞こえた気がする。
運命の番が発情した場合の解決方法は、一つしかない。
(どうしよう、このままじゃ取り返しのつかないことに)
大急ぎで考えるものの、ベッドが近づいてくる。
焦りは増すのに、彼に触れられているすべてがひどく熱くて、思考も追いつかない。
アレクシスはフィアナをひどく優しくベッドに横たえた。
「ま、待って」
起き上がろうとするが、ジャケットの襟元を緩めながらベッドに上がってきた彼がフィアナを片手で押し、あっという間にシーツの上に戻してしまう。
「怖がらなくていい。番に身体が反応しているだけだ」
「殿下、私は、ちが──ぅんっ」
右手で忙しなく自身のジャケットの留め具を外しなから、アレクシスが首筋に吸いついた。肩から胸、腹まで大きな手に優しくなぞられるだけでフィアナの腰がはねる。
お腹の奥がぎゅぅっと熱くなる感じがした。
先程はしたない蜜を垂らした場所がひくひくと脈動し、じわりと熱が戻る。
「こうして撫でられると少しは楽になる?」
「楽、に……?」
「キスはどうかな」
胸を包み込まれると共に、さらに深くなった谷間にキスをされる。
「あ、ゃだ、胸なんてっ」
「私はフィアナを苦しさから解放してあげたいだけなんだ。少しずつ身体が楽になっていくのを感じない?」
彼がフィアナの上胸の白い盛り上がりにちゅうちゅう吸いつきながら、ドレス越しに乳房を優しくさする。
(で、殿下、ここでも親切心を発揮しているのっ?)
善意だとしたら、突っぱねることも迷われる。
するとアレクシスが、フィアナの大きな胸を下から持ち上げた。
「あっ、ふぅん……っ」
甘やかな刺激が胸から身体の中へと走り抜けた拍子に、彼が盛り上がりの先端部分を、歯でカリカリとかく。
「ぁ、それ、んんぅっ」
自分のものとは思えない甘ったるい声が出て、フィアナは驚く。
恥ずかしさのあまり涙が浮かんだ。
ドレス越しではなく、もっと直に感じたいという欲求が全身をひくつかせる。
「泣かないで、フィアナ。発情しているからだよ。何も恥ずかしいことではない。楽になっているのを感じるだろう?」
「そう、言えば……」