ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

鍵のあいた鳥籠
  • yondemill

鍵のあいた鳥籠

著者:
富樫聖夜
イラスト:
佳井波
発売日:
2014年06月02日
定価:
660円(10%税込)
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かわいそうに、こんな僕に囚われて。

男爵令嬢ミレイアには、幼い頃から兄のように慕う存在があった。それは九歳年上の侯爵家嫡男エイドリック。しかし二年前、その彼に無理やり純潔を奪われてからというもの、彼女は男性に対して恐怖心を抱くようになっていた。人を避け、屋敷に閉じこもる日々……。そんな中、留学していた彼が領地に戻ってきた。何事もなかったかのようにふるまう彼に困惑するミレイア。だが二人きりになった途端、彼は「兄」の仮面を脱ぎ捨てて――。

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登場人物紹介

ミレイア

ミレイア

男爵令嬢。信頼していたエイドリックに無理やり純潔を奪われ、男性に恐怖を抱くようになる。

エイドリック

エイドリック

国王の覚えがめでたい侯爵家の嫡男。ミレイアを強引に抱いた後、留学中に浮名を流していたが…。

お試し読み

「可愛い、可愛い、ミレイア。……全部、僕のもの」
「やっ……! んんっ……!」
 唇が塞がれ、エイドリックの舌が入り込んできた。絡みついてくる舌を避けるものの、簡単に捕らえられ、攻めたてられる。上顎を舐められて、ミレイアはぞくぞくと背中を震わせた。キスとはまったく関係のないはずの下腹部に熱が溜まっていき、二年前のことを思い出してミレイアはハッとした。
「や、やめて!」
 顔を背け、何とか唇を外そうとする。けれど、反対にがっちり顎を掴まれてしまい、なすすべもなく彼の唇を受け入れる。キスが深まっていくごとに、手足から力が抜けていった。
「ふ……ん、んっ……」
 やがてエイドリックが顔を上げた時、ミレイアは息も絶え絶えだった。エイドリックは力の抜けた彼女の手を放し、ひっくり返してうつ伏せにすると背中のドレスのボタンを外していく。ミレイアは呼吸を整えるのに忙しく、はじめエイドリックが何をやっているのか分からなかった。けれど、シュミーズドレスのボタンが外され、露わになっていった素肌の部分に外気を感じてハッと顔を上げた。けれどその時にはすでに遅く、全てのボタンが外され、あっという間に腰のところまで引き下げられてしまう。コルセットもないために、薄手の下着だけを身につけた上半身が晒される。あまりの無防備さに、ミレイアはシュミーズドレスを選んだことを後悔した。
「! やめて……! 兄様!」
 上半身からだけではなく、ドレスがいとも簡単にミレイアの下半身からも剥ぎ取られようとしていた。手足をばたつかせるミレイアをよそに、エイドリックはあっさりとその若草色のドレスを彼女の身体から引き剥がす。うつ伏せにベッドに押さえつけられたまま、ミレイアの下着がそれに続いた。
 一糸纏わぬ姿にされたミレイアはエイドリックの手が離れた瞬間、自分を抱きしめ身体を丸めて彼の目から隠そうとした。けれど、エイドリックは彼女の手を掴んで強引に引き剥がし、頭上で押さえつけてしまう。白くて丸い、形のよい胸がエイドリックの目に晒された。
「いやぁ!」
「隠してはだめだよ、ミレイア。……ああ、二年前より、大きくなったかな?」
 エイドリックはそう言って、片手をふくらみに伸ばした。まだ少女の域を脱していなかった二年前より確かにミレイアの身体は成長していた。細い腰と若々しく張り出した胸とのメリハリが、よりいっそう匂いたつような女性らしさを醸し出している。
 片方の胸のふくらみをエイドリックの手に掴まれたミレイアは息を呑んだ。薄紅色の胸の先端が、彼の手の中でたちまち尖り始める。ワインを飲まされ酔っていたとはいえ、二年前、この男の手によって散々胸を弄ばれたことは記憶に残っている。ミレイアは拘束から逃れようと猛然ともがき始めた。
「暴れないでミレイア」
「放して! いや!」
「困った子だね」
 エイドリックはくすっと笑うと胸を掴んでいた手をミレイアのうなじに滑らせると、唯一その時身につけていた髪の赤いリボンを解いて外した。そしてそのリボンでミレイアの両手首をあっという間にぐるぐる巻きにして固定してしまう。
「や、やだっ! 外して!」
 ミレイアは括られた両手を動かして何とか外そうとする。けれど、がっちり巻かれたリボンは強力な枷となってミレイアの自由を奪う。もがいたせいでリボンに擦られた手首が痛かった。ミレイアを押さえつける必要のなくなったエイドリックは、その胸にも手を滑らせ、肌にキスをしながら笑う。
「ミレイア。暴れちゃだめだよ、手首に傷がついてしまう」
「だったら外して!」
「君が僕に素直に身を任せるならね」
 だがそれこそできない相談だ。口をきゅっと結ぶミレイアを見て、エイドリックはくすっと笑うと彼女の耳たぶに歯を立てた。
「ならば、そのままで僕をその身に受け入れるといい。ミレイア、知ってるかい? 君の白い肌にその赤いリボンはとても扇情的に映えるんだ。二年前と同じように、今度も君のその純白な翼に僕の赤い所有の印を刻んであげる。自由を求めて逃げ出してもすぐに僕の腕の中に戻ってくるように──」
 熱い吐息と共に耳に流されるその情欲に満ちた言葉に、ミレイアはぶるっと身を震わせた。けれど、それは怯えだけでなく、何か別のものが入り混じった震えだった。

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