ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

年下王子の恋の策略
  • yondemill

年下王子の恋の策略

著者:
chi-co
イラスト:
五十鈴
発売日:
2015年06月03日
定価:
660円(10%税込)
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逃げないで、素直になってよ。

複雑な生い立ちのセルマは、年老いた貴族との政略結婚を若くして受け入れ、男女の行為を知らぬまま過ごしてきた。その夫も亡くなり、王妃の勧めで王宮の侍女として働いていたところ、第一王子のライナスが熱烈に迫ってきて……。抗いきれずに一夜を過ごし、弟のように思っていた彼を一人の男性として意識し始めてしまう。けれど、一度結婚した身では王子の相手にふさわしくない。離れなければと逃げるセルマだが、ライナスは執拗に追いかけてきて――?

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登場人物紹介

セルマ

セルマ

年老いた夫を亡くしたあと、王宮で王妃の侍女として働いている。

ライナス

ライナス

次期国王と目されている第一王子。大人びて知的だと評判だが、セルマにだけ甘えた姿を見せる。

お試し読み

「セルマ……っ」
「は……あっ」
 セルマは必死にライナスを見つめた。今自分を抱こうとする、自分を必死に欲しいと思っている男の顔を目に焼き付ける。
 秘唇に熱いものが押し当てられた。息をつめると、ずぷりと奇妙な音と共に、それが中へと侵入してきた。強烈な痛みと、圧迫感。呼吸がとまりそうなほどの衝撃に開いた唇からは、声なき悲鳴が漏れたかもしれない。
「セルマ、セルマ」
 動きを止めたライナスが何度も名前を呼んでくれ、腰や足を撫でてくれる。顔中に降るくちづけに応える余裕はまったくなかったが、それでもセルマは何とかライナスを受け入れようとした。
「力を抜いて……っ、うん、そう」
 ライナスの声にも助けてもらい、ようやく少し身体から強張りが解ける。すると、それを待っていたかのように、それまで止まっていた挿入が開始された。
「んんっ、あぅっ、……はっ」
 ずずっと内襞を掻きわけ、ライナスの陰茎はセルマの身体を犯していく。どこまで入ってくるのか、どこまで熱いのか。
 セルマの呼吸に合わせ、ライナスはゆっくりと身体を沈めてくる。熱い息が肌を滑り、ライナスの興奮を教えてくれた。
「セルマ」
「あ……あっ」
「……愛してる、セルマ……ッ」
「!」
(い……ま?)
 聞き間違いだろうか。
「ライ、ナ、ス、さまぁっ」
「愛してる……っ」
 もう一度告げられた言葉に、驚くほど鮮やかにセルマの反応は変化した。それまで苦しさの方が強かったのに、柔らかく中が蕩け、ライナスの陰茎に嬉しげに纏わりついているのだ。
 あからさまな変化に戸惑う間もなく、ライナスがしっかりとセルマの腰を掴んで挿入を激しいものに変化させる。出し入れされるたびに響く淫猥な音に眩暈がしそうになりながら、セルマは必死にライナスにしがみついた。
「……っ」
 荒い息と、必死な眼差し。欲情した男の顔になっているライナス。揺さぶられながらその顔を見つめていたセルマは、唐突に彼の気持ちに気づいてしまった。
(私の……こと)
 彼からのそれは、弟が姉を慕うような、温かで微笑ましい感情だと思っていた。セルマ自身、普段は凛々しく立派なライナスが、自分だけに甘えてくれる姿を嬉しくも思っていたくらいだ。
 だが、もちろんそこに、欲情を孕んだ感情があるなどと考えもしなかった。
 亡くなったフレインとも交流があったライナスが、自分を女性として見ているとは思いもよらず、気づいてしまった今でもどうしていいのかわからない。
(どうして、私をっ)
 気づいてしまえば、これほどあからさまな行為はなかった。フレインが与えてくれた、包み込んでくれる優しい愛情とは違う、生々しくて激しい情熱。抱かれて初めてわかるなんて、自分がどれだけライナスに苦しい思いをさせてしまったのか、後悔と申し訳なさに胸が痛んだ。
 しかし、それと同時に、自分の身体を犯す凶暴な分身と、熱を孕む眼差しに、唐突に彼を一人の男として意識してしまった。

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