ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

ソーニャ文庫アンソロジー 騎士の恋

ソーニャ文庫アンソロジー 騎士の恋

著者:
富樫聖夜、秋野真珠、春日部こみと、荷鴣
イラスト:
yoco
発売日:
2020年02月03日
定価:
748円(10%税込)
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人気作家陣による、極上騎士の独占愛!

姉の婚約者を密かに思い続けていた第四王女は、姉が他の男と密会しているところを見てしまい――!?/失恋して自暴自棄になった侍女は、誰にでも愛想のいいナンパな騎士に、あるお願いをするが……?/女王の命令に従い、憧れの騎士と結婚した侍女。だがこの結婚は仮初のものと思っていて……。/国を滅ぼされ処刑される前夜、薄幸の姫は、戦場で行方知れずになった優しい騎士との幸せだった日々を思い浮かべ――。/ソーニャ文庫初のアンソロジー! 4編収録!
(※本作品に挿絵はありません)

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登場人物紹介

リセリア

第四王女。とある事情から、いつもは野暮ったい姿をしている。姉の婚約者で騎士団長のカルファスに恋をしている。

エリザ

王宮勤めの侍女。失恋して自暴自棄になり、女性の扱いが上手そうな騎士のオネストに、あるお願いをする。

マチルダ

女王に命じられ、女王の乳兄妹で騎士のローガンと結婚する。王都に残ったローガンに代わり領地を治める。

エーディト

国を滅ぼされ、唯一残った王族として処刑を待つ王女。戦場で行方知れずになった騎士のアルバンのことが気がかり。

お試し読み

◆「残念姫」は騎士団長の腕の中(富樫聖夜)◆

「だめですよ、リセリア様。もっと感じてください。私のことしか考えられなくなるまで」
「ああっ、ん……!」
 中に差し込まれた指がバラバラに動き、リセリアの敏感な部分を擦りあげた。お腹側のある一点がリセリアの弱い部分だとカルファスにはとっくに把握されており、先ほどから何度もいたぶられている。そのたびに背筋を快感が走り、リセリアの身体はビクンと跳ねた。
 胎の奥から愛液が染み出し、カルファスの手を汚す。それを恥ずかしいと思う余裕すらリセリアは失っていた。
 一体、あれからどのくらい経っただろう。
 カルファスは焦らなかった。恥ずかしがるリセリアのドレスや下着にキスをして気を逸らせながら脱がせると、賞賛の言葉を口にしながら彼女の肢体をあますところなく手で触れた。リセリアの肌を這う手はやがてキスに代わり、全身をくまなく唇と舌で舐められる。普段自分ではほとんど触れたことがない秘密の部分まで。
 その頃にはリセリアは息も絶え絶えで、初めての淫悦にただシーツを握り締めて身悶えながら耐えるしかなかった。
 もちろんキスだけで終わるはずもない。今度は指が割れ目を押し開き、狭い蜜壺を探っていった。痛みと慣れない異物感に涙を浮かべるリセリアをキスでなだめながら、優しくも容赦ない指が彼女を追いつめていく。


◆博愛騎士の激愛(秋野真珠)◆

「──ずっとこれを想像していた」
「……えっ」
「柔らかいんだろうな、とか。肌は滑らかなんだろうな、とか。君はどんな声を上げるのか、とか。妄想していた」
「も、妄想したんですか……」
「した。めちゃくちゃした。でも、全然違った。俺の妄想なんて所詮妄想だった。本物は、こんなに興奮するものなんだな」
「そ……」
 そうですか、と言いたかったが、恥ずかしさのあまり声が出なかった。
 すると彼はおもむろに上体を起こし、エリザを見下ろした。乱れた黒髪を指に絡めて、熱心に広げ始める。
「この髪を梳いてみたいと、ずっと思っていた。こうしてシーツに広げると、どんな感じだろうかと」
「そ、そうですか……」
 今度は相槌を打てたが、彼の目が、あまりにも愛おしいものを見るようだったから、エリザはますます居た堪れない気持ちになった。
「あの……あの、満足、したなら……えっと、これで」
「終わり、だとか言うつもりじゃないよな?」
「─―」
 そのとおり、終わりにしようと思っていたエリザは、自分が甘かったと思い知った。
「これだけ煽られて、何もせずにいられるはずないだろ? これからが、本番だ」
 凄みのある笑みに気圧されて、エリザは何も言えなかった。
「それが、君の望みだろ」
 突き放すようなオネストの声に、そうだっただろうか、と考える。
 自分は本当にこんなことを望んでいたのだったか?
 しかしその答えだって、今となってはわからなくなっていた。


◆わたくしは形だけの妻ですから(春日部こみと)◆

「んっ……!」
 マチルダは口を塞がれたまま、目を見開いた。まだ何も受け入れたことのない隘路は当然だが狭く、ローガンの太い指では一本でも十分すぎるほどの違和感を覚える。
 ローガンは宥めるようにマチルダの舌を舐め、蜜筒の中に入った指をゆっくりと出し入れし始めた。愛蜜は十分なようで、その動きはとても滑らかで、痛みはない。
 最初は未知の恐怖に身を固くしていたマチルダも、優しいキスと緩やかな動きにホッと身体の力を抜いた。
 するとローガンが「いい子だ」と言うように、優しく頭を撫でてくれる。その感触に微笑みが零れた。ずっと昔、王宮に引き取られたばかりの時、ローガンがこんなふうに頭を撫でてくれたことがあった。女王に引き取られたとはいえ、身寄りのない頼りない立場である自覚があったから懸命に働いた。働いて役に立てば、女王に捨てられることはないだろうと思ったのだ。自分の居場所を確保するのに必死だった。
 そんなマチルダに、ローガンは「無理をするな」と忠告してくれた。だが意地になっていたマチルダは「無理などしていません」とそれを突っぱねた。すると彼は、黙ったまま彼女を見つめた後、するりと頭を撫でたのだ。その手の大きさからは想像できない優しい触れ方と温かさに、マチルダは硬くなっていた心の結び目が解けたのが分かった。そこで初めて、自分が彼の言葉通り、無理をしていたことに気がついたのだ。
(……わたくしは、いつだってこの手に救われてきたのだわ)
 ローガンへの信頼と愛情を再確認して、マチルダは彼の手に頭を摺り寄せる。
 ふ、とローガンが笑う気配がして、瞼に口づけられた。
「もう少し増やすが……身を楽にして」
 囁かれ、マチルダはコクリと頷いた。
 初めての閨事に恐れはあるが、それはローガンが怖いわけではない。
 処女喪失時に痛みがあることも、血が出ることも知っているが、それを与えるのがローガンであるならば、嬉しいとさえ思う。


◆わたしの黒騎士(荷鴣)◆

「エーディト、生きるも、死ぬも、あなたとふたりだ」
 ぐちゅ、と一気に突きたてられた。おなかの奥にみっちりとした彼を感じて、あまりの息苦しさに、エーディトの胸は上下する。彼の下腹と自分の下腹がぴたりとひとつになっていた。
 律動がはじまった。彼の鍛えられた身体がエーディトの肌をこすりあげ、胸の先に刺激が走る。薄桃色であるはずの突起は、彼女の知らない執拗な愛撫で、両方赤く熟れていた。
「あ! ──あ。アルバン、どうして動くの……? あっ」
 それは、いままで人の動きで見たことのない、奇妙な動作に感じられた。
「さあ、どうして動くのでしょうね? ……エーディト、口を開けて」
 言われるがまま口を開けば、すぐに唇の形が変わるほどにむしゃぶりつかれて、意識はそちらに奪われた。肉厚の舌が侵入したかと思うと、くちゅくちゅと舌を絡め取られて舐めつくされる。そのあいだ、彼はずるりと腰を一旦引いて、すぐさま奥の奥に突き入れた。
 鮮烈な刺激に、思わず大きくさけんだけれど、声も唾液も彼が食べつくす。激しく揺すられ、いま、なぜこうなっているのかわからずに、奥にうごめく熱に翻弄された。
 寝台がぎしぎしきしむ。肌と肌が打ちあう音と、粘着質な水の音。荒い息。
 彼を見つめたいのに、唇が離れないから見られない。汗ばむ肌がすべりあう。
 途中で彼の嵩が増し、蠢動したかと思うと、じわりとおなかのなかに熱いものが広がった。けれど、彼の舌に口内を蹂躙されて、深いくちづけに夢中にされた。気づいたときには硬さを取り戻した彼が、力強く楔を穿つ。まるで終わりがないようだった。

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