ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

俺様御曹司は諦めない

俺様御曹司は諦めない

著者:
月城うさぎ
イラスト:
篁ふみ
発売日:
2017年12月02日
定価:
704円(10%税込)
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君は一体、俺の何が不満なんだ。

ホテルのバーでひとり飲みをしていた瑠衣子は、大人の色気が漂う男、静に声をかけられる。酔った勢いで誘いにのる瑠衣子。だが、身体を繋げることにトラウマがある彼女は「自分には指一本触れないで」という条件を出し、その夜は男を悦ばせるだけで終わらせた。それから10日後。一夜限りと割り切っていた瑠衣子の前に、あの夜の男、静が現れた! なんと彼は勤め先の新しい専務で、「瑠衣子にしか欲情しなくなった」と、突然プロポーズまでしてきて――!?
俺様紳士な御曹司×御曹司嫌いな意地っ張りOL、プロポーズをめぐる攻防戦!?

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登場人物紹介

黒咲瑠衣子(くろさき・るいこ)

黒咲瑠衣子(くろさき・るいこ)

とある事情で権力者が嫌い。人に頼ることが苦手で、ついかわいげのないことを言ってしまう。

鳳静(おおとり・しずか)

鳳静(おおとり・しずか)

鳳グループの御曹司。瑠衣子に何度もプロポーズをするが、振られ続けている。

お試し読み

「あっ……!」
 恋人でもない、心を許したわけでもない相手に所有印をつけられる自分がひどく滑稽に思えてくる。男の身勝手な独占欲は、過去に植え付けられた傷を鈍く抉ってくる。
 ──男なんて所詮身勝手な生き物なんだわ。
 無力で無抵抗にならざるを得なかったあの頃と今の自分は、何も変わっていないのではないか。強くなったと思っていたのも勘違いだったのかもしれない。
 小さなボタンはそのまま最後まで外されて、下着も腹部もあらわになった。ひざ丈のタイトスカートがかろうじて下腹から下を隠している。
 決して荒々しくはない手つきで、スカートのファスナーも下げられた。プツンとホックが外され、ウエストの締め付けから解放された。
「この間とは逆だ。今度は俺が君に触れるが、君は俺に触れてはいけない」
 この行為に納得したわけではない。けれど、あの日自分が一方的に彼を翻弄したのは事実だ。これでおあいこになるなら、抵抗して逃げるよりも楽なのではないか。
 ──……これで気が済むなら好きにしたらいい。手に入れてしまえば飽きるでしょう。
「……いいわ。でも、これでおあいこよ」
 合意を得た直後、唇を塞がれる。だがこちらは応える気はない。
 他の女性に欲情できなくなった責任を問われても、瑠衣子はこれ以上彼と関わる気はなかった。
 諦めにも似た境地が心の中に広がっていく。抵抗をなくした肌を、無遠慮な舌にざらりと舐められる。
 いつの間にかブラのホックが外され、肉厚な舌に胸の頂を舐め上げられた。すでにぷっくりと存在を主張しているのは、散々官能を刺激された結果だ。服の上からも刺激をされたのだから仕方がないと思いたい。
 脇に流れた肉を中心に寄せるように手のひらに包み込まれる。
 人差し指と中指の間に胸の先端を挟み込んだ状態で刺激を繰り返し、彼は胸の柔らかさを堪能しているようだ。
 特別大きくもない脂肪の塊を弄って何が楽しいのかわからない。冷静に分析しつつ、意地でも嬌声をあげないように唇はきゅっと真一文字に引き結ぶ。
「声、我慢するのは許してないぞ」
 反対の胸を口に含み、赤く色づいている蕾を舌で嬲ってくる。瑠衣子が声を我慢しているのを咎めるように、赤い実をカリッと甘?みされた。
「ッ……!」
「……またキスでこじ開けられたいのか?」
 ちゅうっとその実を吸ったまま低く問いかけられた。吐息も声も直に肌に伝わってくる。くすぐったさとは別の何かが胸の奥を刺激し、ぞくりとした震えが身体に走る。甘く痺れるような疼きには気づきたくない。
「ふ、ぅ……ッ」
 胸の下の膨らみもカーブに沿ってゆっくりと舌先でなぞられて、彼のマニアックな性癖が垣間見えた。
 世の中には小さめのビキニからはみ出した下半分の胸にそそられる男性もいるらしい。もしや下乳フェチなのでは……としょうもないことを考えて、意識を分散させてみた。だが、触れられる熱に身体は反応してしまう。頭と身体が別々になってしまったように、思うように働かない。
 唾液で濡れた肌も、静がこれから何をしようとしているのかも、身動きが取れない状態では確認しづらい。
 臍の窪みに舌先を差し込まれ、その周辺も丹念に舐められる。そんなところを今まで舐められた経験はなく、ムズムズとした疼きが次第に快楽に変わりつつあった。
「んっ……!」
「くすぐったそうだな。ああ、これも邪魔だ。脱がすぞ」
「あ、待って、きゃ……!」
 タイトスカートが一気にずり下ろされた。腰に手を添えられて、シーツと身体のわずかな隙間をスカートが滑り落ちる。太ももの半ばから足先まで、流れる動作で下半身をあらわにされた。
 上半身はブラウスのボタンをすべて外されて、はだけられた状態でブラがデコルテ付近までめくりあげられている。飾り気がほとんどない機能性重視のそれは、某有名ブランドのお手頃価格のものだ。アウターに響かずワイヤーが痛くないということだけを考えて選んだため、見た目はとてもシンプルな黒いブラ。
 同じブランドの黒いショーツが肌色のストッキングに透けて見えている。かろうじて色が同色だがセットものではない。一流ブランドの高級品しか身に着けないような男の前で晒せるものではないのだが、静は特に女性の下着にこだわりは持っていないようだ。
 中途半端に服を身に着けたままの瑠衣子を眺め、「黒い下着と白い肌のコントラストがエロいな」などとのたまってきた。
「飾り気がないものも瑠衣子らしくはあるが、もう少し透け感がある方が目には楽しい」
 ──そんなの知るか……!
 誰かの目を楽しませるために下着を選んでいるわけではない。瑠衣子は罵りたい気持ちをぐっと堪えた。
 翻弄されてはダメだ。たとえ身体が快楽を拾い集めてきても、それは瑠衣子の本心ではないのだ。静のペースに流されて喘がされたって、心から望んでいるわけではない。
「……早く終わらせて」
 抑揚なく小さく呟いた声を、静はしっかりと聞き取ったらしい。愉悦の滲んでいた表情に陰りが生まれる。
 わずかに眉を動かして訝しんだ後、彼の顔に冷笑が浮かんだ。
「へえ……?」
 目が笑っていないというのはこういうことを言うのだろう。口元が笑みを作っていても瞳には確かな苛立ちを宿している。
 瑠衣子を部屋に連れ込んだときの不機嫌さに逆戻りだ。気まずい雰囲気にもなるが、瑠衣子に彼を楽しませる義理はない。
「義務で抱かれてやるという顔だな。俺がすぐに飽きると思っているんだろうが、それは考え違いだ。俺は一度手に入れた君を手放すつもりはない」
「人の気持ちなんて簡単に変わるものよ」
 好きだったものが嫌いになるし、その逆もある。変わらない想いがあるなら、人は別れを経験しない。
「それなら君に関しては変わらないと、時間をかけて証明してやる」
「遠慮するわ」
「遠慮は受け付けない。俺と会ったのは運命だから受け入れろ」

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