ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

断罪者は恋に惑う

断罪者は恋に惑う

著者:
斉河燈
イラスト:
芦原モカ
発売日:
2020年06月03日
定価:
770円(10%税込)
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逃がさない。俺の……俺だけの……聖域だ。

義兄の罠に嵌り投獄されたアンジェロ。憎悪を胸に牢獄で十二年間を耐え抜き脱獄に成功したが、逃亡中の怪我で死にかけてしまう。そんな彼を救ったのはダイクロイック・アイを持つ少女アリーナだった。六年後、アンジェロはファルコと名を変えマフィアの首領に、アリーナは派手な衣装を身に纏う踊り子になっていた。姉のため薬を求めるアリーナをドラッグで身を持ち崩したと誤解したファルコは、絶望と怒りから彼女の純潔を奪い蹂躙してしまうが──。

死神と異名を持つマフィアの首領×清廉な踊り子、激しい憎悪に囚われ見失った愛の行く末は──!?

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登場人物紹介

アリーナ

アリーナ

ダイクロイック・アイを持つ少女。生活のために踊り子となり、身体の弱い姉を守るために病を治す薬を探している。

ファルコ

ファルコ

脱獄したときにアリーナに助けられ心の拠り所にしていた。しかし踊り子となって薬を求めていることを知り……。

お試し読み

「逃がしはしない」
 部屋の照明に浮かび上がる体は、巌のよう。鍛え抜かれた軍人のような、強靭な肉体には敵うはずがないと絶望するしかなかった。
 しかもその右肩には、鋭い鎌を振り上げた骸骨のタトゥーが彫り込まれていて――。
「死に……神……」
「そうだ。これは、俺の守り神でもあって、かつての俺自身の姿でもある。黒いフードで顔を隠し、瀕死で、憎しみという鎌に縋って立っていた頃のな」
 瀕死……何を言われているのかわからない。
 だが、黒いフードという言葉には引っかかるものがあった。かすかに、記憶の皮下が疼く。そうだ。死神のような、落ちくぼんだ目をした誰かを、どこかで見た。
(でも、いつ、どこで……?)
 考えるほうに気を取られていると、膝に『死神』の手がかかる。
「へぇ、覚えていないのか。しかし、おまえはずいぶん、いやらしく熟れたものだな。椀のような胸に、男を誘う腰……」
 いけないと思ったときには、太ももを大きく開かれていた。
「や……!」
 恥部を覗き込まれて、息が止まりそうになる。キャバレーでは毎晩のように脚を高く上げて踊っているが、あれはドロワーズと厚いレースのペチコートがあればこそ。
 こんなのは、耐えられない。
「やめ、て」
「ここも、咥え慣れているわりに、純粋そうな色をしている」
「もう、放し……て……っ」
 恥ずかしくて、恐ろしくて、消えてしまいたい。
 涙声で訴えても、容赦なく『死神』は覆い被さってくる。脱ぎかけのシャツをわずらわしそうに床に捨て、脚衣の前をはだけながら。
「……ひ……!」
 いきなり処女の場所を割られそうになり、腰を引いたが引き戻された。
「受け入れろ」
 硬い、鉄のような物体で割れ目を撫でられ、ふたたびぐっと腰を落とされる。手足をばたつかせたが、大した抵抗にはならなかった。
 乾いた入り口は悲鳴を上げ、あまりの痛みに涙が滲む。
「いや、いやぁあ……っ!!」
 一度でもそこを破られれば、二度と清い体には戻れない。もしも精を放たれれば子を孕んでしまう可能性もある。こんなに野蛮なマフィアの子を……冗談ではない。
 無我夢中で両腕を振り上げたが、虚しく宙をかくばかりで『死神』には届かなかった。
「処女でもないくせに、そう暴れるな」
 ぐっ、ぐっ、と楔は引っかかりながら入り口を無理やり突破しようとするものの、それより先へは進めない。処女のうえに潤滑が足りないのだから当然だ。
 ――いっそ殺して!
 生きながらこんな地獄を味わうのなら、いっそ喉を掻き切られて死んだほうがましだ。
 そう思うのに、頭には姉の顔が浮かぶ。姉が待っている。そうだ。姉のために、死ねない……どんなに苦しくても、生きて帰らなければならない。
「退いて……ぇっ」
「……ふうん。薬なしでは濡れないということか」
 すると、このままでは埒が明かないと『死神』も判断したのだろう。『死神』はべろりと己の右手の指を舐め、その唾液をアリーナの処女の場所へと塗りつけた。
「う……っ」
 ぬるりとした感触が、気持ち悪い。海藻にでも撫でられているようで、鳥肌が立つ。
「ほぐしはしない。あいにく、俺はそれほど親切な男じゃない」
「や、いやぁ」
 かぶりを振って乞うても、長い指は退かない。蜜口だけでなく、秘裂にまでごつごつした節を押しつけられ、前後に動かされると、今まで感じたことのない強烈な刺激に腰がビクン! と浮いた。
「……あ……!」
 唇からこぼれ出たのは、自分でも知らないような甘い声。
(なに、今の……)
 慌てて自分の口を押さえたが、動揺までは隠しきれなかった。
『死神』は、顔を歪めて笑う。
「ようやく、本性を現したか」
 くっくと愉快げに喉を鳴らしながらも、やはりどこか、投げやりに。
 捌かれているみたいだと、アリーナは思う。まな板の上で、売り物の魚のように。
 なぜなら、これから息の根を止めようというのに、『死神』の欲には食らってやろうという本能的な部分がない。?っ捌いて食うところがなければ、それでもかまわないと冷静に刃をかまえているふうなのだ。
「くだらない。こんな刹那的な快楽に救いを求めるとは」
「ひぁああっ!」
 悲鳴をあげてしまったのは、割れ目の隙間を爪で弾かれたからだ。まろやかな静電気がそこに発生したかのように、刹那の刺激が背すじを駆けのぼった。
「ヤあ、あっ……」
 怖い。己の腹から次々に引き出されていく未知の感覚が、怖い。
「そうか、ここか」
 しかし『死神』はかえって興が乗ったのだろう。おののくアリーナの太ももを両腕に抱え、逃げられないように固定しながら、割れ目をぱくりと広げ、内側の粒を弾いた
「ふぅ……っう……!」
 繰り返し、長い指は動く。ゆっくりと秘裂を擦られるたび、びくつかずにいられない体を嘲笑われているのは明白だ。
「くぅ、う……っ」
 心の底まで痛くて、苦しくて、悔しい。
 アリーナはのたうちながらシーツにしがみつき、密かに涙を流した。
 彼を怒らせた理由に、思い当たる節があるなら、まだ納得できる。けれど、拐われた理由もわからないのにこんな仕打ち……何が『名誉ある社会』だろう。偉そうに言いながら、結局、単なる無法者でしかないではないか。
 人を人とも思わない野蛮人。
 暴力的で傍若無人で、人の言葉が通じない男。
「……し……っ」
「うん?」
「人でなし……!」
 罵ってやらねば気がすまなかった。直後、脚の付け根の粒をさらに強く弾かれて「きゃぁあっ」と悲鳴を上げる羽目になったが。
「色欲に堕ちた薬漬けのおまえが言うことか。ああ、もちろん俺自身はよくわかっているさ。自分がすでに人でないことなど」
「あ……あ」
「唯一の聖域まで消えたのだから、なおさら人には遠くなった」
 刺のある口調にはなぜだか自嘲が含まれていたが、気にする余裕はなかった。
 秘芽をつままれ、ぬめりで逃がすようにしごかれて腰が浮く。電気の塊が下半身を転がっているようで、怯えずにいられない。
 気丈に抗いきれない悔しさに唇を噛むと、両胸にさらりと『死神』の前髪がかかった。天を向いた形のいい乳房に、いきなり舌が這う。
「ひ、ぁ!」
 くすぐったいが、それだけではなかった。
 じゅっ、と右の頂を吸われると感じたのはとろけるほどの快感で、アリーナは身悶えて戸惑う。
「っぁ、んっ」
 死にたいほど嫌なのに――全力で拒否したいのに、『死神』の舌の滑らかさや温かさはあまりにも心地いい。身も心も、明け渡しそうになる。
(どうして……っ、わたし、どうしてしまったの……!?)
 そうして胸を舐め回されながら割れ目を弄られていると、腰の内側にじわじわと期待感が溜まっていく。もっと触ってほしいというふうに、腰がくねって乳房を揺らす。
「ヤ……ぁ、あ……っぅ」
「左も舐めてほしいのか」
「んんっ……ちが……う」
「なんだ。今さら不慣れそうな声を出して。そうして誘うのもおまえの手管か」
 ちろ、と右胸の先をつつく舌が赤い。なまめかしい艶がさらなる官能を誘い、ひくっと蜜源が蠢く。
「んん……っふ……いや、ぁ」
「欲しいなら、素直に乞うがいい。俺の上で腰を振りたいと、ねだってみせろ」
 そんなこと、絶対にしない。
 アリーナはぎゅっと唇を噛んだが、淫部には生ぬるい蜜が染み出していた。もう『死神』が唾液を塗りつけなくとも、乾くことなく指が滑る。
「跨りたいのだろう」
 こりこりと花芽を捏ねる指先の、なんと意地悪で誘惑的なことか。
「イきたいと、言ってみろ」
「……っ、ん……っ」
 酔いそうになりながらも、アリーナは懸命にかぶりを振った。指先でぐりっと入り口を抉られても、屈するつもりはなかった。
 ――思い通りになんて、なってたまるものですか。
 痛めつけられて苦しみ悶える姿が『死神』を喜ばせるなら、声すら上げてやるものか。そう思ったのに――。
「アリーナ」
 呼ぶ声が真上から降ってくる。
 はっとしたときには、両手を頭上で重ねて掴まれていた。慌てて振りほどこうにも、腕力の差は歴然だ。ばたばたと肘だけばたつかせているうちに、男の体はアリーナの太ももの間に入り込み、蜜口にはまた、硬くそそり立つものの先端があてがわれていた。
「っく……ひ……っ」
 体を縮こめて抗ったが、張り詰めたものは無情にも処女の入り口を割ろうとする。
「やめっ……やめて、ぇ」
「必死に乞うほどの貞操観念などないくせに……っ」
 どうしてそこまで執拗にアリーナを蔑もうとするのだろう。『死神』の言葉は理不尽で、理解したくもない。直後、ぐずっ、と音を立てて雄のものが埋まろうとすると、激しい痛みが脚の付け根に走って絶望感がどっと胸にあふれた。

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