ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

夜叉王様は貢ぎ物花嫁を溺愛したい

夜叉王様は貢ぎ物花嫁を溺愛したい

著者:
八巻にのは
イラスト:
氷堂れん
発売日:
2023年03月03日
定価:
825円(10%税込)
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「そなたは俺を困らせる天才だな」

幽鬼の国を統べる月華は『夜叉王』と呼ばれ、恐れられている。そんな彼の元へ同盟を結ぶための“貢ぎ物花嫁”として、イーシン国の美姫・春蘭が贈られてきた。悪鬼とも化け物とも噂される彼を春蘭は恐れず、ただ無邪気に花が綻ぶような笑みを向けてくる。自分のような男なんかに……と怯むが彼女を突き放すこともできない。実は二人ともある理由からお互いの為人を知る機会があり、密かに想いを募らせているのだが、初心すぎてなかなか進展しなくて……。

人間嫌いの王×傾国の美姫、初心な恋を育む中華風ロマンス。

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登場人物紹介

春蘭

春蘭

イーシン国の美姫。侵略の危機から国を守るため貢ぎ物として贈られてきたが……。

月華

月華

幽鬼の国を統べる王。夜叉王と呼ばれ恐れられている。引きこもっているが実は……。

お試し読み

「……んっ、ッ……ぅ」
 途端にキスをしていたときと同じかそれ以上の愉悦を感じ、春蘭の口から甘い声がこぼれる。鼻にかかった声は妙に恥ずかしくて思わず口を塞ぐが、月華の口づけは終わらなかった。 「そなたは、ここが弱いのだな」 「ま、待って……っ、ひぁんっ!」
 より強く肌を吸い上げられ、大きな声がこぼれてしまう。
 その声に羞恥を覚えるが、月華はむしろその声や愉悦を引き出そうとするように、春蘭の弱い場所を唇と舌でいじめ抜く。
 気がつけば脚を持ち上げられ、太ももの上まで衣がはだけていた。
 月華の眼前で脚を開く格好になり、春蘭の肌が羞恥で赤く染まる。思わずやめてほしいと言いかけるが、月華がこぼした感嘆の声が春蘭から言葉を奪った。
「そなたはどこまでも美しい」
 恥ずかしい格好をしているというのに、月華の眼差しは喜びと愛おしさにあふれている。 「こうして口づけられるのも、夢のようだ」
 その言葉で、春蘭もまたこうした触れ合いを望んでいたことを思い出す。
 幻影香に乱されたあのとき、春蘭の中に生まれた危うい欲望はずっと燻っていた。
 恥ずかしいけど淫らな自分を暴かれたい、彼の手で乱れたいと思う気持ちは消えずに残っていて、それは今もどんどん大きくなっている。
 望みは表情にも表れ、月華を見つめる表情がより艶を帯びていく。
「このまま、先に進んでもかまわないか?」
 見つめ合い、月華が静かに問うた。
 たぶん表情から、春蘭の気持ちを把握したのだろう。
 言葉で答えるのは難しかったけれど、恥ずかしさをこらえて春蘭はそっと頷く。
「大事にする」
 短い言葉には、月華の優しさと愛情が込められていた。
 それにほっとする一方で、春蘭の身体はわずかに強ばる。
(これから、月華様と……そういうことをするのよね……)
 母からの教えや九狼の入れ知恵で、身体を重ねることについての知識は多少あるものの、詳しいとは言えない。恋人や夫婦が行うその行為は激しく、淫らであるということは知っているが、詳しい手順まではちゃんと把握していなかった。
(それはきっと、月華様も同じだろうし、上手くできるかしら……)
 彼は奥手だし、こうしたことが得意には見えない。
 口づけは巧みだったけれど、ここから先の経験はないに違いない。
 そこに不安を覚えていると、月華の手が腰へと回される。 「……え?」
 次の瞬間乱れた衣の間から下着を抜き取られ、春蘭の胸と下腹部があらわになる。
「ああ、やはりここも綺麗だ」
 月華はしみじみ言うが、あまりの早業に春蘭は亜然としたまま固まる。
(な、なんだか……手慣れてる……?)
 初心で奥手な彼のことだから色々手間取るのではと考えていたのに、むしろ余裕さえ感じ取れる。
 手際のよさに戸惑っているうちに、月華は春蘭の襞にそっと指を這わせた。 「……ひゃ、ッ……あッ!」
 弱い場所を攻められたせいで、既に濡れ始めていたそこを、月華の指が優しくこすり上げる。思わず出てしまった声を抑えようと口を手で覆うが、少しずつ強くなっていく指使いを前にすると、こらえることは難しい。
「声は我慢しなくていい」
「んっ、でも……ッ、あっ……」
「そなたは声も美しいのだから、隠す必要はない」
 むしろ聞かせてほしいというように、月華は襞を攻めながら再び太ももへと口づけを落とす。
 二ヶ所を同時に攻められると腰がビクンと震え、再び痣から熱が広がり始めた。
 蜜口の奥がヒクつき、月華の指が濡れていく。彼は滑りがよくなった指先でゆっくりと襞の間を掻き分けると、その奥に潜む花芽をそっとこすった。
「……ッあ、そこ……は、ッ……!」
 激しい愉悦が込み上げ、春蘭は甘い声をこぼしながら身悶える。
 身体の震えが止まらなくなり、背中の下に敷かれた毛布を掴むが、全身に広がる熱と快楽をやりすごすことはできそうもない。
 濡れる下腹部を晒したまま、ビクビクと震える姿ははしたないはずなのに、月華はそれをどこか満足そうに見ている。
「可愛い」
 それどころかしみじみとそんなことを言い、彼は濡れる密口に唇を寄せた。 (う、嘘……)
 次の瞬間、月華の肉厚な舌が襞の合間に滑り込む。
 春蘭の入り口をほぐすように丹念になめられると、指で攻められていたときよりも大きな愉悦が込み上げる。
「あっ、ひぁッ、待って……、ッん、待って……」
 春蘭の腰が揺れ、気がつけば月華の顔に下腹部を押しつけるような格好になる。
 はしたない行為を止めたいのに、月華の舌使いが激しさを増すものだから、春蘭の身体は全く言うことを聞かない。
「おねがい……だめッ、待って……」
 このままではまずいと思うも、時に指も交えて襞や花芽を攻められると、抵抗の声さえ甘く誘うような響きになってしまう。
(どうしよう、すごく、気持ちがいい……)
 下腹部をなめられて恥ずかしいはずなのに、羞恥さえ春蘭を興奮させてしまう。
 だが、与えられる快楽に身を任せられるほどの経験もなく、春蘭は身悶えながら月華を見つめる。
 視線に気づいたのか、月華が上目遣いに春蘭を窺う。向けられた眼差しにはぞくりとするほどの色香が満ちていて、春蘭は更に戸惑うことになった。
「や、やっぱり……さっきまで……と、違いすぎます……!」
 別人のような表情や色気に戸惑っていると、脚をぐっと持ち上げられる。
「ッ……あ、だめぇ、待ッ……!」
 濡れた秘部を舌でいじめ抜く月華に、春蘭は甘い悲鳴と抗議の声を上げる。
「えっ、あ……、そこ、だめ……ッ」
 全身を震わせ、強すぎる快楽のせいで目に涙さえにじむと、ようやく月華が唇を離してくれた。
「そなたこそ、先ほどまでとは態度が違う。この部屋に来たときは、こうしてほしいと望んでいただろう」
「でも、そんなところ……ッン、なめるなんて……」
「こうしてほぐしておかないと痛むのだ」
「……ずいぶん、お詳しい……ですね」
 もしや経験があるのだろうかと考えた瞬間、春蘭の胸にモヤモヤとしたものが浮かぶ。
 だがそんな不安は、月華が浮かべた苦笑がかき消した。
「誤解するな。そなたも狼太公から妙な本を渡されただろう」
「ほ、ん……?」
 春蘭は釣りに行く前に見せられた怪しい書物のことを思い出した。
「いつか好いた相手ができたときに困らぬようにと、こうした知識を無理やり教え込まれたのだ」
「なら……こういうことは……初めてですか?」
「そうだ。だからこそ、そなたに負担をかけぬよう、丁寧に愛している」
 舌による愛撫は彼なりの気遣いだったのだと思うと、恥ずかしさに喜びが重なっていく。
「て、丁寧……にしては、激しかったです……」
「痛かったか? なら、すぐにやめるが」
「い、痛くはなかったですが……」
「なら、心地よかったのか?」
 笑顔で尋ねられるが、肯定するのはそれはそれで恥ずかしい。
 だが顔を真っ赤にしていると、月華はすべてを悟ってくれたようだ。
「わかった。なら、このままいこう」
 蜜口に唇を寄せる月華に、春蘭の胸が乱れる。
「……ン、っあ……」
 舌による愛撫が再開されると、より大きな愉悦を感じ、春蘭は身悶えた。
 それから時間をかけ、月華は春蘭の入り口を愛撫し、押し広げた。
 最初こそ激しかったものの、月華の手つきや舌使いは丁寧すぎるほどだった。
 それが妙にじれったかったが、もっと激しくしてと言うこともできない。
 前回とは違い幻影香が出ることもなく、中途半端に理性があるため、恥じらいを捨てきれなかったのだ。
「そろそろか」
 だから月華がようやく満足げに頷いたとき、春蘭はどこかほっとしていた。
 小さく息を吐くと、月華が少し心配そうな顔をする。
「怖いか?」
「いいえ、大丈夫です」
 むしろ早く彼が欲しいという気持ちでいっぱいだった。彼の優しい愛撫は心地よかったけれど、だからこそ物足りなさを覚えてしまっていたのだ。
「苦しければ言ってくれ。俺も経験がないから、無理をさせるかもしれない」
 月華の言葉に頷くと、彼はゆっくりと春蘭の身体に覆いかぶさってくる。
 背も高く、筋肉に覆われた彼の身体が迫るとかなりの圧迫感がある。
 しかしその腕に閉じ込められることに、今は喜びを覚える。 「月華様……」
 喜びをこらえきれずに名前を呼ぶと、月華がわずかに目を見開く。
「そんなに可愛い顔をしないでくれ。優しくしてやりたいのに、難しくなる」
 何かを我慢するような顔に、春蘭は思わず手を伸ばす。
「優しくしなくても、大丈夫です」
 そのままそっと頬を撫でると、月華の表情に妖しい色香が増していく。
「乱暴にされても、かまわないというのか?」
「だって、こういうことは……激しいものなのでしょう? それに相手が月華様ならかまいません」
「また、そういうことを……」
 困ったように眉を寄せたかと思うと、月華が春蘭の唇を乱暴に奪う。
 激しい口づけに戸惑うも、そうされることにも今は喜びを感じる。
(月華様に求められているって感じがして……嬉しい……)
 今更のように、彼に触れてほしいと思っていた理由に気づく。
 春蘭はずっと、月華に自分を求めてほしいと思っていたのだ。
 彼と想いが繋がったものの、それまでずっと春蘭のほうから迫ってばかりいたから、心のどこかではまだ不安だったのかもしれない。
「……春蘭……ッ」 激しい口づけの合間に呼ぶ声には、春蘭への愛おしさが満ちている。
 だから不安は消え、春蘭もまたそれに応えようと必死になった。
 舌を絡めながら月華の衣をぎゅっと握りしめていると、月華が春蘭の太ももをぐっと押し広げる。
 同時に何か硬いものが、春蘭の襞をこすり上げた。

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