ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

復讐婚

復讐婚

著者:
山野辺りり
イラスト:
ウエハラ蜂
発売日:
2018年10月03日
定価:
726円(10%税込)
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償え、君の全てで。

田舎町で慎ましく暮らすオリヴィアの前に突然現れた、元婚約者ブラッドフォード。かつて彼がオリヴィアに近づいたのは、オリヴィアの父親に復讐するためだった。「君は用済みだ」とオリヴィアの手を振り払った彼。ショックを受けたオリヴィアはブラッドフォードの前から姿を消した。それから3年――。再会した彼はひどく憔悴して見えた。困惑するオリヴィアだが、ブラッドフォードはオリヴィアと強引に結婚すると、昼夜を問わず執拗に快楽を刻み込んできて……。
復讐に囚われた海運王×一途な娘、歪な結婚生活の行方は……!?

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登場人物紹介

オリヴィア

オリヴィア

父親がブラッドフォードの仇であったことにショックを受け、合わせる顔がないと彼の前から姿を消す。

ブラッドフォード

ブラッドフォード

両親を死に追いやったオリヴィアの父親を憎み、復讐を果たす。姿を消したオリヴィアを探していた様子……。

お試し読み

「オリヴィア……」
 囁かれる自分の名に、眩暈がした。愛されているのではないかとほんの一瞬勘違いしたからだ。それだけ、柔らかく呼ばれ、口づけられていた。
「……は……っ」
 溶けそうなくらいに熱い口内で舌を絡ませ合っていると、お互いが混ざり合う錯覚に陥る。同じものになど絶対になれないのに、どこか心地いい妄想にオリヴィアは溺れた。
 心の中で思うだけなら自由だ。これは愛情を確かめ合う行為だと。今だけそう思いこんでいたかった。後でどれだけ虚しくなったとしても、今日この日だけは夢を見ていたい。
 至近距離で見つめ合ったブラッドフォードの茶色の瞳に映る自分の顔は、浅ましく彼を求めていた。オリヴィアは瞼を閉じ、その残像を振り払う。だが苛立たしげな仕草で顎を捉えられ、視線を合わせることを強要された。
「ちゃんと見ていろ。今から誰に、何をされるのかを。そしてせいぜい絶望すればいい。……私の父や母が受けた痛みには到底及ばないが」
 オリヴィアの甘ったれた夢想は、木っ端みじんに砕かれた。勝手に思うことさえ罪悪だと宣告されたのも同然だ。己の罪から逃避していただけ。卑怯な自分の本性に吐き気がした。
「……君が憎い。だからもっと私を恨めばいい。その心が真っ黒に染まって、他には何も考えられなくなるくらい」
「ひ、ぁっ」
 誰にも触れられたことのない花弁を開かれ、微かな痛みを感じた。引き攣れる違和感に顔をしかめれば、舐めて唾液で濡らした指で弄られる。ブラッドフォードの指は男性にしては細いけれど、それでも節くれだっていて硬い。暴かれたことのない隘路に侵入されると、オリヴィアの内壁は悲鳴を上げた。
「痛っ……」
「まさか……初めて、か?」
 そんな当たり前のことを聞かれるとは思いもしなかった。オリヴィアが痛みを堪えながら頷けば、性急だった彼の手が動きを止める。
「そうか……新雪を踏み荒らしている気分だ」
 愉悦を孕んだ彼の声は、とても楽しそうだった。そのくせ強引に蹂躙してこようとはしない。むしろオリヴィアが慣れるまで待とうとでも言うのか、ゆっくり解すように内側を摩られた。
 あくまでもこちらの快楽を引き出すような動きに、強張っていた身体が緩み始める。いやらしい蜜が奥底から湧き上がるのに、時間はかからなかった。
「……ゃ、あ……っ」
 確かな快楽が背筋を駆け上がる。指先まで痺れる喜悦に淫らな水音が大きくなってゆく。次第に滑らかさを増すブラッドフォードの指の動きは、大胆なものになっていった。
「アッ、駄目……ぁ、あ、やぁあっ」
 ぐちゅぐちゅと?き出される蜜液が、オリヴィアの太腿を伝い落ちる。彼の身体に阻まれて閉じられない脚が無様に戦慄いていた。
 布の残骸と化したウエディングドレスは、身をくねらせるたび器用に?かれ、今やオリヴィアは一糸纏わぬ状態にされている。一方ブラッドフォードはシャツを羽織ったままなのが、余計に悲しくて恥ずかしい。こんなにも乱れているのは自分だけで、彼は冷静なのだと宣告されている気がするからだ。
「ひ、ぁあっ……」
 淫猥な花芯を摘ままれ、オリヴィアはビクビクと四肢を痙攣させた。飽和した快楽のせいで頭は真っ白になっていて何も考えられない。忙しく息を継いでいると、?みつくようなキスをされた。
「……んっ、ぅ」
 呼吸が苦しい。反射的に頭を振れば、尚更深く口腔を貪られた。
 絡まり合う舌と舌。啜られる唾液の音。耳から犯される淫靡な水音で、余計に思考が纏まらない。喘ぎさえ喰らわれて、オリヴィアは懸命に息を吸った。
「辛いか? だがこんなものじゃない。私はもっと───地獄をのたうち回っていた」
 絞り出すように吐かれた台詞に慄然とする。おそらく誇張でも何でもないブラッドフォードの本心だ。復讐を終えた今でも、彼は救われていないのだ。オリヴィアのせいで。
「だから、償え。君の全てで」

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