ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

絶倫御曹司の執愛は甘くて淫ら

絶倫御曹司の執愛は甘くて淫ら

著者:
月城うさぎ
イラスト:
小豆こま
発売日:
2025年03月05日
定価:
869円(10%税込)
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君が好きだから抱きたいだけだ

かつて政略結婚をさせられそうになった凪紗。結婚式当日に相手が失踪し未遂に終わったが、それを機に自身も実家から逃げ出した。六年後、ジュエリー店で働く彼女は占いをきっかけに婚活を決意、その矢先に財閥の御曹司壱弥に出会う。ある事情で彼のマンションに仮住まいすることになった凪紗は、セクハラ客を追い払った壱弥に告白される。気持ちを確かめ合い、甘く濃密に朝までなんども愛されるが、彼女に近づく不穏な陰が――!?

スパダリ絶倫御曹司×実家のしがらみから抜け出したいOL、囲い込まれた運命の恋

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登場人物紹介

凪紗(なぎさ)

凪紗(なぎさ)

ジュエリー店勤務。神社である実家を飛び出し都内で暮らす。自分らしく生きる芯のある女性。

壱弥(いちや)

壱弥(いちや)

財閥系企業の御曹司で、凪紗の雇用主である翠川の友人。俺様気質だが育ちがよく世話焼きタイプ。

お試し読み

 腰をグイッと抱き寄せられた。
 抵抗する間もなく、身体を壱弥の膝に乗せられる。
「ひゃあ! 壱弥さん……っ!?」
「これなら凪紗の顔もよく見える」
 顎に指が添えられた。至近距離から目を合わせれば、彼の端整な顔が視界に映る。
「顔が赤い」
「……赤くもなります。こんなこと、誰にもされたことがないんですから」
「本当に? 君に触れた男はいないと都合よく判断するが」
 何故彼がそんな風に言うのだろう。上機嫌な声が心地よく響く。
「今までお付き合いしていた方もいないので、慣れてなくて……あの、下ろしてくださ……」
「極力君のお願いは叶えてあげたいが、それは聞き入れたくないな」
 身体を抱きしめられた。凪紗の肩がビクッと跳ねる。
 壱弥の体温が布越しに伝わりそうだ。
 彼の香りを吸い込むだけでさらに身体の熱が上昇する。
「言葉にしないと伝わらないと思うから言うが、俺は君に惹かれている」
「っ!」
「やはり気づいていなかったか」
 壱弥は小さく苦笑した。その目には甘さが見え隠れしている。
「それって、どういう……」
 心臓が大きく跳ねた。ドキドキしすぎて耳まで熱い。
 その鼓動は決して嫌なものではなくて、凪紗は戸惑いが隠せない。
「君を独り占めしたいと思っているということだ」
「え……っ!」
「店で男性客に手を握られていただろう。正直殺意が湧いた」
 ──物騒!
 確かに壱弥は不機嫌だった。帰宅してからもずっと悩んでいるほどに。
 だがその理由は単なる過保護な感情からではなくて、恋愛感情から来ていたのだとしたら。嫉妬していたというのではないか。
「他の男に手を握られるのも嫌だなんて、どうかしていると思うだろう」
 彼の声が鼓膜をくすぐる。
 低音の美声が心地よく響いた。凪紗の鼓動がさらに加速する。
「あの……私は別に、なにか特別な人間ではないですよ? 特技もないですし、なにかに優れているわけでもありません」
 容姿に自信もないため一目惚れをされる要素は極めて低い。凪紗は自分の外見は平均的だと思っている。
 彼は一体なにに惹かれたのだろう。
「なにかに優れているから惹かれるとは限らないだろう? 理屈じゃないから説明は難しいが、凪紗といると心が安らぐ」
「……っ」
 腰に回った腕に力が込められた。重くないだろうかと心配になるが、腕の力強さが頼もしい。
 ──どうしよう。さっきからずっとドキドキが止まらない。
 異性に抱きしめられたのははじめてだ。壱弥の香りが鼻腔を擽り、余計心臓を騒がしくさせる。
 恋人同士でもないのに、手を握られるのも抱きしめられるのも拒絶感がないのは何故だろう。
 尾川から手を取られたときはぞわっとした震えが背筋を走ったが、壱弥は違う。もっと触れてほしいと思ってしまう。
「嫌なら拒絶してほしい」
 スッと唇を指先でなぞられた。そんな風に触れられたこともはじめてで、凪紗の胸がギュッと収縮する。
 ──恥ずかしすぎて顔も身体も熱い。
 目は口ほどに物を言う。潤んだ瞳を壱弥に向けると、彼の目尻が僅かに赤く染まった。凪紗の瞳に拒絶の色が浮かんでいないことは明白だった。
 自分でもどうしたいのかわからない。だが、なにかを懇願するように壱弥を見つめる。
 彼の顔が近づくから、凪紗は無意識に瞼を閉じた。唇に柔らかな感触が当たった。
 ──マシュマロみたいにふにっとしてる。
「嫌?」
 吐息混じりの声が艶やかに響いた。唇に感じたのは壱弥の熱だとわからないほど子供ではない。
「嫌じゃない……です」
 ほんのり触れただけのキスだ。体温を味わう余裕もないほどささやかな触れ合い。
 言質を取った壱弥はふたたび凪紗と唇を合わせた。
「んぅ……」
 今度はしっとりした感触が伝わった。キスをするなどこれが二回目。柔らかくて弾力があり、不思議な心地にさせてくれる。
 ──どうしよう。ドキドキが止まらない。
 アルコールが入っているわけでもないのに、キスをしているだけで酩酊感に浸る。一滴でも酒が入っていたら言い訳に使えただろうに、残念ながら素面だ。
 こんなとき、普通なら拒絶するべきなのだろうか。
 出会って二週間ほどしか経っていない男と暮らしているだけでも常識的におかしいのに、男女の仲になってしまったら泥沼にはまるかもしれない。
「……抵抗しないのか?」
 静かなリップ音が響いた。下唇に吸い付かれて、凪紗の腰が小さく跳ねる。
「あ、の……どうしたらいいのか、わからな……」
 顔も身体も熱くてたまらない。瞳は潤み、触れ合うキスだけで身体から力が抜ける。
「俺に触れられるのは嫌じゃない?」
 再度確認された。無理やり丸め込むのではなく、壱弥はきちんと凪紗の気持ちを確認する。
 そんな紳士的なところも壱弥に惹かれる所以かもしれない。
 凪紗は頷きながら、気持ちを伝えるように自分から壱弥に抱き着いた。
「……っ」
 息を呑んだのはどちらだったのだろう。
 衝動的な行動が恥ずかしいが、離れたいとは思わない。
 ──でも、恋人でもない男性に抱き着くのははしたなかったかしら。
 ハッと理性が働いた。壱弥の腕から抜け出そうとする。
 だが当然ながら壱弥は易々と凪紗を放す男ではなかった。
「逃げるな、凪紗。嫌じゃないならこのまま流されてしまえばいい」
「それは、どういう……、きゃっ!」
 膝の裏に両手が差し込まれた。不安定な浮遊感を味わい、咄嗟に壱弥にしがみつく。
 身体を横抱きにされて運ばれた先は壱弥の寝室だった。
「……っ! 壱弥さ……ん」
 宝物を扱うようにベッドに寝かせられた。はじめて入る壱弥のプライベート空間は余計なものなど一切置かれていない。
 ──壱弥さんの香りが充満してる……。
 呼吸をするだけでクラクラしそうだ。
 部屋の隅に置かれている間接照明がぼんやりと室内を照らした。
「凪紗が部屋に帰っても俺は追わない。俺から逃げるなら今だぞ」
 そう言って逃げ道を用意してくれる優しさはあるが、彼の表情からはいつもの余裕が消えていた。
 壱弥は約束を守る人だろう。もし凪紗が少しでも拒絶を示したら、彼はちゃんと引いてくれる。
 でも……、と凪紗の理性が待ったをかけた。
 ──今出て行ったら後悔しそう。
 もしもここで部屋に帰ったら、彼との距離は縮まらないどころか開いてしまいそうだ。今までよりもよそよそしくなり、こうして触れることは叶わないかもしれない。
 ──そんなことを考える時点で答えなんて出ているわ。
 凪紗の手相が示す結婚相手は壱弥がいい。彼が自分の運命の人だったらいいと何度も考えていた。
 自分から壱弥を望むのはおこがましいと思っていたが、彼が選んでくれるなら喜んでその手を摑みたい。
「……逃げません。逃げたくないです」
 はしたないと思われても構わない。
 でも今は心の赴くまま、壱弥と最後まで結ばれたい。
 これは単なる好奇心ではない。たとえ壱弥との縁が結ばれなかったとしても、このひと時は大切な思い出となるだろう。
「凪紗……ありがとう」
 壱弥はネクタイの結び目に指をひっかけた。しゅるり、と衣擦れの音がする。
 ベッドに片膝を乗せてシャツを脱ぐ仕草がセクシーすぎて、凪紗はすでに呼吸がおかしくなりそうだ。

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